「忘年会:来客が獲得した賞品の税務処理」

注:本稿は2019年12月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

 

今号ではタイトルの通り、忘年会(年会)に参加した来客が獲得した賞品(景品)の税務上の考え方についてご説明していきます。

 

 

 

 

【個人所得税の計算】

 

個人所得税の計算上、以下の所得は「偶然所得」として計算をし、個人所得税を申告納税しなければなりません。(財政部・国家税務総局公告「個人が取得する関連収入の個人所得税課税所得項目の適用に関する公告」財政部・税務総局公告2019年第74号)

・年会、座談会、慶賀式典やその他の活動中、会社の従業員以外の個人に対して贈るお土産や個人が取得するギフト収入

・企業が業務の宣伝広告等の活動中、会社の従業員以外の個人に対して贈るお土産(インターネット上の紅包を含む)

但し、企業が提供する割引券的な性質を持つ消費券、代金券、相殺券、優遇券等のギフトは除外とします。

 

所得金額の測定については、自社で製造する製品やサービスについては製品やサービスの市場販売価格を以て所得額を確定し、購入した外部商品やサービスについてはその商品やサービスの実際の購買価格に基づいて所得額を確定します。(財政部・国家税務総局「企業のマーケティング活動でのギフト贈呈個人所得税に関する問題の通知」財税[2011]50号)

 

「偶然所得」は19年の個人所得税法大改正前からある個人所得税の課税所得区分の一つですが、19年の改正後の取り扱いは以下のようになっています。

・偶然所得とは個人が取得する賞品やくじその他の偶然性質のある所得を指します(個人所得税法実施条例第六条)。

・偶然所得は個別に所得税額の計算を行い、適用税率は一律20%となります(個人所得税法第二条、第三条、第六条)。

・個人所得税の源泉徴収義務者は所得を支払う会社となり、源泉徴収義務者は都度源泉徴収納付を行わなければなりません(個人所得税法第九条、第十二条)

個人所得税法上の取り扱いについては以上となります。

 

ことのついでに、個人所得税法以外の取り扱いについても簡単に見てみたいと思います。

・増値税法上の取り扱い

自社で製造する製品やサービスについてギフト提供を行った場合については、本稿中国会計・税務の現場から9月号「増値税:値引きと赤字発票の発行」をご参照ください。

・企業所得税法上の取り扱い

企業が商品販売促進のため商品価格の値引きを行った場合、値引き後の金額を以て商品収入の金額と確定します。

 

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019126

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:20211231

2022年以降の個人所得税税務①

注:本稿は2019年9月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で一部の図表が壊れておりますのでご了承ください。

【はじめに】

昨年の今頃に発布された個人所得税基礎控除額の改正(月3,500元→5,000元、当時)を皮切りに、個人所得税法の改正、年末に発布された個人所得税法実施条例の改正所得控除(专项附加扣除)の導入、駐在員の個人所得税税務実務を全般的に明確化する財政部・税務総局「非居住者個人及び住所を有しない居住者個人に関する個人所得税政策関連公告」(財政部税務総局公告2019年第35号、以下35号公告といいます)の今春の公布に至るまでの一連の改革及びその後の実務定着により、個人所得税改正はひと段落しました。

この一連の法改正の中には、既に2022年から再度制度改正を行う内容が含まれています。駐在員の給与報酬は予算編成上無視できない大きな要因であることが多いと思いますので、この制度改正も同様に2022年からの変動因子として無視できないものであると考えられます。

本号では、この内容について今の段階から周知徹底のため、解説をいたします。

 

【本文】

改正法規の公布・(ほぼ)即実施が基本となる中国の税法改正実務において、2~3年後の制度改正が予告されているのは非常に珍しいことといえます。正確には法改正ではなく、時限的な優遇規定が2022年より撤廃となるという形式ですので、2022年より優遇撤廃により一般的には増税となることを予告している過渡的な規定の内容を理解する必要があります。

この過渡的な規定は、財政部税務総局「個人所得税法修正後関連優遇政策関連問題の通知」(財税[2018]164号、以後164号通知といいます)です。164号通知は2018年12月27日付に出た規定で、当時「年一回ボーナス優遇規定」の維持が明確化されたことで注目を集めた規定でした。

駐在員個人所得税税務に関連して164号通知の中では2点今回ご説明すべきものがあり、一つはその「年一回ボーナス優遇規定」、もう一つは「外国人個人手当免税優遇政策」です(ストックオプションに関する規定もありますがここでは割愛します)。後者は次号で説明します。

 

 

 

(1)年一回ボーナス優遇規定(164号通知、一)

 

 

居住者個人が取得する全年一回性のボーナスで、「国家税務総局個人が取得する全年一次性ボーナスの計算徴税の調整に関する個人所得税方法問題の通知」(国税発[2005]9号、以下9号規定といいます)の規定に符合するとき、2021年12月31日より前、当年の総合所得には算入せずに、[全年一回性のボーナス収入を12で割って得た数字]を本通知の「月次税率表(本稿添付)」に参照し、適用税率と速算控除数を確定し、単独で計算納税を行う。計算公式は:

納付税額=全年一回性ボーナス収入×適用税率―速算控除数

居住者個人が取得する全年一回性ボーナスは、当年の総合所得に算入して計算納税することを選択しても良い。

2022年1月1日より、居住者個人が取得する全年一回性ボーナスは、当年の総合所得計算に算入して個人所得税の計算納税を行わなければならない。

 

一言で説明しますと、20211231日以前に実際に支給されるボーナスは、年1回に限り優遇税率を用いて税額を計算し、申告納税を行うことが出来ます。2022年以降はその規定がなくなり、すべて「総合所得」の一部として計算・申告納税を行います。

 

総合所得とは、2019年より導入された概念で、年間の所得を算出して年間の税額を求めるものです。

居住者個人の総合所得=一納税年度の収入(給与報酬所得等)-6万元の基礎控除-個人負担社保・積立金等-所得控除

この優遇規定は、2021年まではボーナスを上の総合所得に含めなくていいという規定になります。

 

9号規定で定義されている全年一回性ボーナスとは、源泉徴収義務者が一年間の経済活動利益と従業員に対する年間の業務業績の総合評価状況を踏まえ、従業員に一回で支払うボーナス、とされておりこれには年末昇給、年俸制や成果主義を実施する会社が評価に基づき実際に支給する年俸や業績給与を含みます。一納税年度内、一人の納税者に対してこの優遇処理は一度だけ使用することが出来ます。

 

<例>

簡単のため、月の給与が国内外の支給の分を合わせて税前3万元、年2回支給されるボーナスが各税前5万元、所得控除や手当免税適用の一切ない駐在員A氏がいます。

 

202112月まで、年一回ボーナス優遇規定を用いる場合

◎月次給与12か月分+2回目のボーナスについての税額

総合所得:   3万元×12+5万元-年間基礎控除6万元=35万元

税額:            35万元×25%-31,920=55,580元

 

◎1回目のボーナスについての税額

[全年一回性のボーナス収入を12で割って得た数字]:

5万元÷12=4,166元

適用税率と速算控除数を確定:

「月次税率表」により税率10%、速算控除210元

税額:            5万元×10%-210=4,790元

 

総税額:        55,580+4,790=60,370

 

20221月以降、優遇規定廃止後

総合所得:   3万元×12+5万元×2-年間基礎控除6万元=40万元

総税額:        40万元×25%-31,920=68,080

 

実際には、駐在員の方の大部分がグロスアップ計算によって税額を算出するため、上のような計算方法ではないことにご留意頂きたく、上は実際にどのように税額が増えるかを試算するためだけのものとお考えください。

一度貴社の申告計算担当者または申告担当業者に、2022年以後の影響を試算頂くと良いかもしれません。

 

添付資料として、「総合所得」の税率・速算控除表、及び年1回ボーナス規定で使用できる「月次税率表」をご参照ください。

 

資料1:「総合所得」の税率・速算控除表

个人所得税预扣率表一

(居民个人工资、薪金所得预扣预缴适用)

级数 累计预扣预缴应纳税所得额 预扣率(%) 速算扣除数
1 不超过36000元 3 0
2 超过36000元至144000元的部分 10 2520
3 超过144000元至300000元的部分 20 16920
4 超过300000元至420000元的部分 25 31920
5 超过420000元至660000元的部分 30 52920
6 超过660000元至960000元的部分 35 85920
7 超过960000元的部分 45 181920

 

資料2:月次税率表

 

按月换算后的综合所得税率表

级数 全月应纳税所得额 税率(%) 速算扣除数
1 不超过3000元的 3 0
2 超过3000元至12000元的部分 10 210
3 超过12000元至25000元的部分 20 1410
4 超过25000元至35000元的部分 25 2660
5 超过35000元至55000元的部分 30 4410
6 超过55000元至80000元的部分 35 7160
7 超过80000元的部分 45 15160
 

附件下载:

 

 

 

次号は「外国人個人手当免税優遇政策」について説明いたします。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201994

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:20211231

駐在員の帰任に関する税務処理の明確化

注:本稿は2019年7月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で一部の図表が壊れておりますのでご了承ください。

【はじめに】

前号に続き、駐在員の個人所得税税務実務を全般的に明確化する財政部・税務総局「非居住者個人及び住所を有しない居住者個人に関する個人所得税政策関連公告」(財政部税務総局公告2019年第35号、以下35号公告といいます)に基づく、駐在中の駐在員の個人所得税申告の論点について整理をします。

【本文】

今号では、期の途中で帰任する駐在員の税務処理について簡単にまとめます。

一般に駐在員は3年程度以上の任期を終え、本国に帰任するもしくは別の拠点への駐在に異動するのが一般的かと思います。着任の年に帰任するのは稀であるため、2018年以前の個人所得税実務上は「満1年以上5年未満」のカテゴリーに基づき、当該駐在員の方は帰任時まで申告を行っていました。

 

ところが、2019年からの改正所得税法においては年単位で居住者判定を行うことが明確化されたため、帰任する年において183日に満たずに帰任する場合には、その年は非居住者として申告を行うこととなりました。これは前年以前の処理と実務上大きく異なる点です。

 

 

個人所得税法 第一条

中国に住所を有する者、または住所がないが一納税年度内で中国国内に累計183日以上居住する個人は、居住者個人とする。

中国に住所がなく居住していない者、または住所がなく一納税年度内で中国国内に累計183日に満たない期間居住する個人は、非居住者個人とする。

 

 

これに伴い派生する論点として、「満1年以上6年に満たない居住者」として年の途中まで申告をしていた駐在員が急に帰任するようなケースがあげられます。

 

 

35号公告 五、(一)2

住所の無い個人が先に居住者個人として判定され、居住日数が短くなったことで居住者個人の要件を充たさない時は、居住者個人の要件に達しなくなった日から年度終了の15日以内までに、主管税務機関に対して報告をしなければならず、非居住者個人として課税所得を計算し直し、税金を追納しなければならず延滞金は徴収しない。還付の発生する場合、規定に基づいて処理をする。

 

 

なお35号公告においては、帰任後に取得したボーナスで、中国滞在期間中に属するものは中国の国内源泉所得とすることが明記されています。

 

 

35号公告 一、(二)

住所の無い個人が国内での契約履行又は職務の執行を停止し出国した後取得したボーナス又はストックオプション取得について、国内就業期間に属する分は国内源泉所得とする。

 

よって、帰任の翌月等に直ちに帰任時の確定申告として追納・還付申請をするよりは、帰任後最初のボーナス支給以降に確定申告を行う方が一般的には便宜があるでしょう。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019527

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特に期限なし

「労務報酬の個人所得税申告2019」

注:本稿は2019年6月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

労働契約を締結した従業員に支払う給与は、給与報酬所得として個人所得税を申告します。

 

一方で、社外のアルバイト的な関与をされる方に対する報酬もよく発生します。これを労務報酬所得と言いますが、実務上イレギュラーな形で発生することが多いので意外にご質問を頂くことが多い内容です。

 

本号では、このようなケースにおける個人所得税の基本的考え方を解説します。

本号は20182月のMizuho China Weekly Newsに掲載した記事を、2019年個人所得税改正を反映して修正したものです。

【労務報酬所得:日本語】

 

(1)一般的な労務報酬の納税義務、税額計算方法

  1. 労務報酬所得の定義

労務報酬所得を得る場合には個人所得税を納税しなければなりません(個人所得税法第2条)。労務報酬所得とは、個人が設計、内装、据付、製図、化学験査、測定、医療、法律、会計、コンサルティング、講義、翻訳、原稿査閲、書画、彫刻、映画、録音、録画、演出、講演、広告、展覧、技術サービス、紹介サービス、ブローカーサービス、代行サービス及びその他の役務に従事して取得する所得を指します(個人所得税法実施条例第6条)。

 

  1. 月次源泉徴収税額の計算

労務報酬所得を支払う個人または会社は源泉徴収義務者となります。

源泉徴収義務者が居住者個人に労務報酬所得を支払う時、支払の都度または月ごとに源泉徴収納付をしなければなりません。

毎回の収入が4,000元を超えない場合には800元を差し引き、その残額を課税所得額とします。4,000元を越える場合には20%を差し引き、その残額を課税所得額とします(個人所得税源泉徴収納付申告管理弁法(試行)の発布に関する公告(国家税務総局公告2018年第61号、以下61号公告といいます)第八条)。

 

  1. 一般的な税率

労務報酬課税所得に対して比例税率を適用し、一般的な税率は20%とします(61号公告第八条)。

 

以上より、労務報酬の多くのケースについてはこれで計算が出来ます。

例えば雇用関係になくオフィスの掃除だけを手伝ってもらうような臨時工員に対し、税前で月1,000元の報酬を払うとする場合、

税額: (1,000 – 800 ) ×20%=40

手取り:1,000-40=960元

となります。

 

(2)良くある問題-グロスアップ

手取りで月1,000元の報酬を払うとする場合、

税額:(x – 800)×20%

手取り: x – {(x – 800)×20%} = 1,000

よって額面は1,050元となります。

 

(3)高額労務報酬

給与所得等との税率のアービトラージを避けるためと思いますが、労務報酬でも高額な場合には税率が20%ではなく、異なってきます。

具体的には、課税所得が20,000元を超える場合には超える部分につき30%が、50,000元を超える場合には超える部分につき40%が税率として課されます。

 

4)年度確定申告―19年からの論点

新個人所得税法の施行により、労務報酬所得は「総合所得」の一つの項目となり、年度ごとに給与報酬所得と合算の上、年間で納付すべき個人所得税を再計算することになります。よって労務報酬所得と給与報酬所得を共に得ている個人の場合には、通常納付すべき税額が予納税額と一致しないと想定されることから確定申告が必要となります。

 

例えば、上の例で月1,050元の労務報酬所得のみを得ている臨時工員の場合

 年間の課税所得は1,050×0.8×1260,0000 よって年間納付税額は0

 累計予納金額は(1,050 – 800)×20%×12600

よって600元が確定申告後個人に還付されると考えられ、会社としては手取りが月1,000元になるように設定したはずが、最終的に個人の手元に届く金額は月1,050元となることになります。

 

余談となりますが、この総合所得の概念の導入及び所得控除(专项附加扣除の概念の導入を主因として、「手取り」での契約が実務上問題となる部分が多いことから、「手取り」で契約を行っているお客様によっては税前への切替を進められております。しかし、「手取り」での契約がダメになったという意味ではない点も重要であって、誤解のないようにお願いいたします。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201958

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特段制限なし

 

 

「駐在員の駐在中に関する税務処理の明確化」①

注:本稿は2019年5月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で一部の図表が壊れておりますのでご了承ください。

【はじめに】

前号に続き、駐在員の個人所得税税務実務を全般的に明確化する財政部・税務総局「非居住者個人及び住所を有しない居住者個人に関する個人所得税政策関連公告」(財政部税務総局公告2019年第35号、以下35号公告といいます)に基づく、駐在中の駐在員の個人所得税申告の論点について整理をします。

 

前号でも示した通り、2019年改正個人所得税法以前の駐在員税務実務において具体的な状況に応じ計算方法を定めていた「国家税務総局国内に住所の無い個人が取得する給与報酬所得の納税義務問題に関する通知」(国税発[1994]148号、以下94年通知といいます)や「国家税務総局中国国内に住所の無い個人の税収協定の執行及び個人所得税法の若干問題に関する通知(国税発[2004]97号、以下04年通知といいます)等に替わり、35号公告が公布され2019年1月1日に遡って施行されました(同時に94年通知や04年通知は廃止されました)。

【本文】

2019年5月の申告時より、個人所得税申告システム(※)のユーザーインターフェースが35号公告を反映した内容となり、外国人(※※)についてシステム中の各「公式」に基づいて申告を行う形となりました。

※:上海市、広東省、江蘇省のシステムは確認済

※※:正確には「総合所得申告」の「正常給与報酬所得」、「非居住者所得申告」の「外籍人員正常給与報酬」等

 

「公式」に基づいて申告を行うのは2018年以前の実務にもあったものですが、2019年年初の個人所得税申告システムからは一度削除されており、今回35号公告公布後再登場する形となりました。外国人が在籍する経営者の皆様におかれましては、今回財務担当者から

・外国人の申告実務が「公式」を選択する形で申告を行うよう変化しました

・当社の在籍する外国人についてはXXの形で申告を行います

・4月までの計算方法とXXのような変更があり、XX元程度の税額の影響があります、もしくは特段計算方法や税額に影響はありません

というような報告は受けられましたでしょうか?

もちろん、申告システムに変更があったから即ち申告内容に変更が出るということではありませんし、税法の改正や新法規の公布に合わせて必要な場合変更となるべきですが、いずれにしてもリスクの高い駐在員の個人所得税税務実務に一定の影響を与える事項ですので、社内で報告・連絡・相談が出来ているかというテストケースのひとつになるかもしれません。(この手のテストケースは実務上頻繁に発生します)

 

 

 

閑話休題。2018年以前の実務では、94年通知や04年通知等に基づき「中国に満1年以上5年を超えず居住している駐在員」について以下に基づき申告計算を行っていました。

 

 

 

国税发[1994]148号

四、关于在中国境内无住所但在境内居住满1年的个人纳税义务的确定根据税法第一条第一款、实施条例第六条的法规,在中国境内无住所但在境内居住满1年而不超过5年的个人,其在中国境内工作期间取得的由中国境内企业或个人雇主支付和由中国境外企业或个人雇主支付的工资薪金,均应申报缴纳个人所得税;

 

 

国税发[2004]97号

(三)按国税发〔1994〕148号第四条或第五条规定负有纳税义务的个人应适用国税函发〔1995〕125号第四条规定的下述公式:

应纳税额=[当月境内外工资薪金应纳税所得额×适用税率-速算扣除数]×[1-当月境外支付工资/当月境内外支付工资总额×当月境外工作天数/当月天数]

 

 

今回35号公告により、類似した公式が定められました。

 

 

二、住所の無い居住者個人に関する給与報酬所得収入額計算

(二)住所の無い個人が居住者の場合

一納税年度内で、国内に累計して満183日居住する住所の無い個人が取得する給与報酬所得について、当月の給与報酬収入額は以下の規定に基づき計算する;

1.住所の無い個人が国内に累計して満183日居住する年度が連続して6年に満たない場合

国内に累計して満183日居住する年度が6年に満たない住所の無い居住者個人は、実施条例第四条の優遇条件に符合する場合、国外で就業する期間に帰属しかつ国外の会社又は個人が支払う給与報酬所得部分を除き、その取得する全部の給与報酬所得について、個人所得税を計算納付しなければならない。給与報酬収入額の計算公式は次の通り(公式三);

当月の給与報酬収入額=当月国内外給与報酬総額×

      当月国外支払給与報酬額  当月給与報酬所属就業期間国外就業日数

  1- ―――――――――――――× ―――――――――――――――――

    当月国内外支払給与報酬総額 当月給与報酬所属就業期間カレンダー日数

 

 

「住所の無い」という用語は過去の本レポートでも解説していますが、駐在終了後中国国外へ帰任する個人は「住所の無い」個人であるという定義が一番基本的なものです。また、今号では解説を省略しますが、財政部・税務総局「中国国内で住所の無い個人の居住時間の判定標準に関する公告」(財政部税務総局公告2019年第34号)により、全ての外国人の「満183日居住する年度」は2019年を1年目として起算することになります。

 

ここで、35号公告の上位の規定となり、上の規定でも参照されている個人所得税法実施条例第四条の箇所を記載します。

 

 

 

第四条 中国にいる住所の無い個人で、中国国内の居住日数が累計で満183日となる年度が連続して6年に満たない場合、主管税務機関に届け出の上、中国国外源泉所得且つ中国国外の企業または個人が支払う所得については、個人所得税の納税を免除する。

 

この「主管税務機関に届け出の上」の表現は2018年以前の個人所得税法実施条例の表現を踏襲していますが今一つ明確でない部分であり、お客様側でもご確認ください。

 

(1)実施条例第四条の「個人所得税の納税を免除する」をどう考えるか

実施条例第四条の「個人所得税の納税を免除する。」は財務以外の方にもクローズアップされやすく、且つ誤解を生みやすい点ですが思考回路は以下のように考えられます。

 

 

「中国国外源泉所得且つ中国国外の企業または個人が支払う所得については、個人所得税の納税を免除する。」(実施条例第四条)

 

 

「国外で就業する期間に帰属しかつ国外の会社又は個人が支払う給与報酬所得部分を除き、その取得する全部の給与報酬所得について、個人所得税を計算納付しなければならない。」(35号公告二(二)1.)

 

 

給与報酬収入額の計算公式は次の通り(公式三);

 

つまり、非常に基本的な点ですが会社が各自勝手に「中国国外源泉所得且つ中国国外の企業または個人が支払う所得については、個人所得税の納税を免除する。」を解釈するのではなく、実務上は公式三に基づいて計算申告を行うべきことになります。

 

(2)一般的な駐在員は日本で受け取る給与を申告すべきなのか

上に関係する論点ですが、そもそも一般的な中国現地法人の駐在員は日本等で受け取る給与についても中国で申告すべきなのでしょうか。これについては、駐在員の方を三パターンに分けて考えると良いと思います。

 

① 中国大陸の現地法人に出向し(雇用契約等の関係にあり)、出向元等他の会社の職務を持たない方

駐在員の方で多いのはこのパターンです。下の規定により、日本等で受け取る給与も中国国内で役務提供する対価と解されるため、すべてが中国国内源泉所得の給与として申告が必要です。

 

個人所得税法実施条例第三条(一)「任職、雇用、契約等中国国内で役務を提供することで取得する所得は支払地点が中国であるか否かに関わらず、中国国内源泉所得である

 

かつ、この方の場合は下の規定により、国外に出張や休暇に出たとしてもすべて国内で就業していると計算されるため、前頁(35号公告二(二)①)の公式の分子後半「当月給与報酬所属就業期間国外就業日数」が0になります。公式の後半の分数計算は不要となり、単純に「当月の給与報酬所得=当月国内外給与報酬総額」となります。

 

 

35号規定一(一)「国内の就業期間には国内での実際就業日、国内外での公休暇、個人の休暇、研修を受けた日数を含む。」

 

 

上の2点によりこの方は、日本等で受け取る給与を含めたすべての給与所得を申告しなければなりません。(次号に続く)

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201954

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特に期限なし

「駐在員の着任に関する税務処理の明確化」

注:本稿は2019年4月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で一部の図表が壊れておりますのでご了承ください。

【はじめに】

2月号のレターでも記した通り、改正個人所得税法、個人所得税法実施条例及び源泉徴収に関する各法規だけでは、駐在員の個人所得税計算が従前のように十分に出来ない、もしくは担当者によって解釈が割れる可能性が十分にあり、「国家税務総局国内に住所の無い個人が取得する給与報酬所得の納税義務問題に関する通知」(国税発[1994]148号、以下94年通知と言います)のような規定に替わる新たな規定の整備が求められていました。

 

今回2019年3月14日付けで財政部税務総局は「非居住者個人及び住所を有しない個人に関する個人所得税政策関連公告」(財政部税務総局公告2019年35号、以下35号公告といいます)を公布し、2019年1月1日に遡って施行されました(同時に94年通知は廃止が明確化されました)。この35号公告は駐在員の税務実務を全般的に明確化することに寄与した公告になり、今号では着任時の論点について整理をします。

【はじめに】

まず、2月号のレターの内容を一部再掲しますと、国外の親会社から駐在員の形で中国の子会社に就業する外国人は、以前94年通知三の以下部分に基づき個人所得税計算・申告を行っていました。つまり例えば2019年3月に初めて来中する外国人駐在員で、駐在期間が1年以上予定されている外国人の場合には、来中した3月当初から満183日以上の外国人と「みなして」計算・申告納税を行っていました。

 

 

国税发[1994]148号

取得的工资薪金所得是由境外雇主支付并且不是由中国境内机构负担的个人,事先可预定在一个纳税年度中连续或累计居住超过90日或在税收协定法规的期间中连续或累计居住超过183日的,其每月应纳的税款应按税法法规期限申报纳税。

 

今回19年年初までの改正により、「一年間に183日以上いる外国人は居住者、それ以下は非居住者である」とシンプルに定義・整理されたため、税務局窓口や局内でも当初それ以外の指導が行われず、2019年3月に初めて来中する外国人駐在員で、駐在期間が1年以上予定されている外国人の場合にも、最初は非居住者として申告をし、その後居住者に変更しなければならないのか?混乱が見られることになりました。

 

今回35号公告により、以下の点が明確となりました。

 

 

五、住所の無い個人に関する関連徴税管理規定

(一)住所の無い個人の予定国内居住時間に関する規定

住所の無い個人が一納税年度に初めて申告をするとき、契約等の状況に基づき一納税年度内に国内に居住する日数並びに租税協定に規定する期間内の国内滞在日数を見積もり、その状況に応じて税金を納付しなければならない。実際の状況が見積もりの状況と異なることになった場合、以下の規定に基づいて処理を行う。

 

この規定により、今年の中途において初めて来中する駐在員が駐在開始時点より居住者として申告すればよいか、非居住者として申告すればよいかの指針が確定しました。一般に駐在員の場合には駐在初年度中に駐在任期が満了し、国外へ帰任することはないと思いますので、そのような契約等の状況に基づき年末まで居住を続けると仮定したうえで居住者または非居住者として申告をその年度において続けて行うことになります。

同時に、既に昨年以前より中国に派遣されている駐在員が(一般には)居住者として申告すればよいことも確定しました。理論的には比較的大きな内容と言えます。

 

なお、「住所を有する」とは戸籍、家庭、経済利益関係により中国国内に習慣的に居住することを指します(改正個人所得税法実施条例第2条)。なお、仕事等により居住し、その原因が消滅した後中国から帰国する個人は中国が習慣的居住地ではありません(国家税務総局「個人所得税の徴税に関する若干問題規定」の印刷発布に関する通知、国税発[1994]89号)ので、駐在員の任務を終えた後国外へ帰任する駐在員の方は通常住所を有しないものと考えます。また、居住地の判定については別途いくつかの規定があるため、軽率に判断することはお勧めいたしません。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201949

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

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「本社で採用され駐在員として中国に派遣された中国人の方の個人所得税申告論点」

注:本稿は2019年3月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

【はじめに】

改正個人所得税法に基づく申告・納税が2019年2月より行われ、また累計計算による給与計算も早ければ2019年2月月初払いより適用され、改正に関する実務は一巡をしてまいりました。

今回は、本社採用で中国に派遣された中国人駐在員の方の申告の論点について触れ、改正個人所得税法に合わせて導入されたため余り脚光を浴びていない納税者識別ルールの整理について解説を行います。

【本文】

現在日本本社で採用され、駐在員として中国に派遣される中国人の方は少なくありません。それぞれ個人の事情は異なりますが、総合すると以下のような特徴を持つ方が多いといえます。

 

中国の身分証またはパスポートを保有しており、かつ日本で永住権等を取得している。

 

日本本社で採用され、駐在後は家族の本来居住地である日本に戻る予定である。

 

中国の身分証等を保有しているため、就業ビザを取る必要がない。

 

他の駐在員同様日本で社会保険に加入し続けているため、中国で社会保険に加入すると二重加入になる。

 

上のような方を仮に本稿では「中国人駐在員」の方と呼ぶことにします。

こういった中国人駐在員の方は、今回の改正以前では個人所得税法上「華僑」というカテゴリーがありまして一般の中国人の方より優遇を受けた形(月3500元ではなく4800元の税額控除)で申告を行うことが多くみられました。今回の改正で「華僑」の概念は消滅したわけではないようですが、少なくとも18年10月の改正により税額控除は中国人外国人に関わらず月5000元(年6万元)に統一されたため、華僑と主張する税法上のメリットはなくなりました。

 

ところで、今回の個人所得税の改正に伴い、以前も類似規定はありましたが「自然人納税人識別番号関連事項に関する公告」(国家税務総局公告2018年第59号、http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c3960494/content.html 、以下59号規定と言います)が2018年12月17日付で公布されています。

 

59号規定により以下のように規定されています。

・自然人納税人識別番号は、自然人の納税人が税務実務を行う際の唯一の番号となります。税務実務には、申告、納税、還付申請、納税証明の発行、納税状況確認等が含まれますので、この番号が一度付与されれば中国の税務実務で使い続けることになります。

・中国の身分証を持つ者は、中国の身分証が自然人納税人識別番号となります。

・中国の身分証を持たないものは、「有効な身分証を税務局に提出したうえで税務局により納税人識別番号を付与されます。

・「有効な身分証」は、以下により定義されます。

  • 中国の身分証を有する中国公民の場合、中国の身分証。
  • 【中国のパスポートを有する】(意訳)華僑で中国の身分証がない場合、中国のパスポートと華僑の身分証明。
  • 香港・マカオ住民の場合、《港澳居民来往内地通行证》または《中华人民共和国港澳居民居住证》。
  • 台湾住民の場合、《台湾居民来往大陆通行证》または《中华人民共和国台湾居民居住证》。
  • 《中华人民共和国外国人永久居留身份证》を持つ外国人の場合、《中华人民共和国外国人永久居留身份证》と外国パスポート。
  • 《中华人民共和国外国人永久居留身份证》はないが、《中华人民共和国外国人工作许可证》を有する外国人の場合、《中华人民共和国外国人工作许可证》と外国パスポート。
  • その他の外国人の場合、外国パスポート。

 

この規定及び弊社の顧客実務の必要によりヒアリングしたいくつかの税務局によれば、以下のことが説明できます。

59号規定の通り、中国の身分証を持つ中国人駐在員は中国の身分証により個人所得税の申告をしなければなりません。

外国パスポートを除き、他の外国の身分証は一切中国税務申告上有効なものではありません。よって、例えば「日本の永住許可証」は中国の申告上使用してはいけません。

中国で社会保険に加入していない駐在員中国人の方の場合。税務申告情報と社会保険の情報一元化により一定のリスクはありますので、個別ケースごとに加入の要否を再検討されるべきでしょう。

駐在員の場合どのような法的形態により中国に派遣されているかが立替給与の国外送金の論点はもちろん、社会保険上でも判断根拠となるようです。合法的な範囲で個々及び会社のニーズに応じた契約・給与支払形態が採られるべきでしょう。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201939

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特に期限なし

「個人所得税:住所の無い個人とは」

注:本稿は2018年8月のみずほフィナンシャルグループ MIZUHO CHINA WEEKLY NEWSに掲載されました記事を2019年5月に一部加筆修正したものです。

【はじめに】

実務の世界では個人所得税の申告システムが更新され、いくつかの点について変更が行われました。
本号では、この更新のうち「外国人住所」の問題について理論的な解説を行います。実務上、税務申告システムの変更は頻繁に行われますが、法規改正等をフォローされる中国の会計税務にお詳しいお客様でも、システムの変更までは把握していないことはやむを得ません。しかし、税務リスクに関わるレベルで税務申告システムの変更が行われることは実務上度々ありますので、税務実務になじんだ専門家に定期的に申告内容を見てもらうのが良いといえるでしょう。

 

【外国人の住所】

(日本語版)
今月の金税三期個人所得税申告システムでは重要な変更(アップグレード)が行われ、申告対象者の個人情報を提出する必要があります。この中で、外国人については「住所の有無」を申告する必要があります。
これについて、原則として通常の外国人駐在員(中国の身分証保有者を除く)は中国国内で「住所のない者」であると考えます。

 

「住所」とはどのように定義されていますでしょうか?
個人所得税法実施条例第2条によると以下のように定義されています。
第二条 個人所得税法の言う中国国内に住所を有する個人とは、戸籍、家庭、経済利益関係により中国国内に習慣的に居住する個人を指す。

国税発[1994]89号「個人所得税の徴収に関する若干の問題」により、「習慣的に居住」の定義が解釈されています。
一、「習慣的に居住」の問題をいかに考えるか
個人所得税法実施条例第二条の法規により中国国内に住所を有する個人とは、戸籍、家庭、経済利益関係により中国国内に習慣的に居住する個人を指す。習慣的に居住とは、納税義務者が居住者かまたは非居住者かの一つの法律解釈上の考え方であり、実際に居住地またはある特定の時期の居住地を問題とするものではない。学習、勤務、家族親戚への訪問、旅行等の場合に中国国外に居住する場合、それらの要因がなくなった後中国国内に居住する個人は、中国をその個人が習慣的に居住する場所であると考える。

但し、この「考え方」は絶対のものではありません。国際的にみても居住者の定義は均一ではありません。
なお、習慣的居住の問題は「『中華人民共和国政府とシンガポール共和国政府の所得に対する二重課税の回避及び脱税の防止に関する協定』及び議定書条文解釈の印刷発布通知」(2010年国税発75号)にもより詳細な解釈が示されています。

 

(中文版)
这个月的金税三期个税扣缴系统出现了重大升级,需要重新报送人员身份信息。
如果有要申报的外国人,信息中有一个内容是关于有无住所的选项。
对于这一点,我们解释如下:
原则上来说,通常所有的外国人派遣员工(除了持有中国身份证的),都被认为属于在中国境内“没有住所”。

那么关于“住所”,究竟是如何定义的呢?
参考①:个人所得税法实施条例
第二条 税法所说的在中国境内有住所的个人,是指因户籍、家庭、经济利益关系而在中国境内习惯性居住的个人。

参考②:国税发[1994]89号
一、关于如何掌握“习惯性居住”的问题
条例第二条法规,在中国境内有住所的个人,是指因户籍、家庭、经济利益关系而在中国境内习惯性居住的个人。所谓习惯性居住,是判定纳税义务人是居民或非居民的一个法律意义上的标准,不是指实际居住或在某一个特定时期内的居住地。如因学习、工作、探亲、旅游等而在中国境外居住的,在其原因消除之后、必须回到中国境内居住的个人,则中国即为该纳税人习惯性居住地。

需要注意的是,以上观点也并非绝对。
国际上对于该论点也持不统一观点,其他国家会根据各自的税法等进行定义。
另外,关于“习惯性居住”的问题,在国税发[2010]75号《中华人民共和国政府和新加坡共和国政府关于对所得避免双重征税和防止偷漏税的协定》及议定书条文解释的发布通知中,也有比较详细的解释。

「駐在員の家賃の処理」

注:本稿は2018年3月のみずほフィナンシャルグループ MIZUHO CHINA WEEKLY NEWSに掲載されました記事を2019年5月に一部加筆修正したものです。

 

【はじめに】

駐在員の家賃を会社が負担する事例は良くみられますが、関連する経理処理や税務処理についてはご質問を頂く定番と言えるところです。特に、お客様が就業ビザ更新に絡んで税前給与金額を増やしたいと思われたり、はたまたお客様が外国人の手当免税優遇政策の適用を目的とした節税を考えられたりと、色々な方向に向かうことが多い分野です。
家賃の件に限りませんが、駐在員の個人所得税に関する分野は会社さん毎に少しずつ異なった傾向を持つ、なかなか一般化してお話ししにくい分野であり、同時に税額への影響が大きいため税務リスクの高い分野であると言えるでしょう。また一度誤った処理を始めると毎月同様の処理が行われ、修正がされにくく、後で発覚するとかなりのインパクトを持つという意味でもリスクが高いと言えます。

 

【駐在員の家賃の経理処理】

会社が駐在員の家賃を支出する場合の経理処理について考えてみましょう。

 

(1)賃借料として計上

まず、駐在員の家賃を「賃借料」として計上することは企業所得税の所得の計算上誤りです。これは直ちに修正すべきです。

 

(2)福利費として計上

従業員の衛生保険、生活、住居、交通のために支出する各種手当や非貨幣性福利の場合には、従業員福利費の範囲に該当します。(「企業給与報酬及び従業員福利費の企業所得税控除の問題に関する通知(国税函[2009]3号)」第三条)

企業所得税実施条例の第40条に規定する従業員福利費は給与報酬総額の14%を超えて損金算入をすることが出来ない(「企業所得税実施条例」第40条)ため、ローカル社員人数に比して駐在員人数の多い会社では、この点を視野に入れる必要があることがあります。

損金算入限度の枠内で企業所得税の計算上損金に算入するため、この住宅費用に対しては会社宛の発票を必ず発行してもらうよう、大家に依頼する必要があります。

 

(3)給与報酬に含める

一方で福利費に計上せず、住宅費は個人負担として給与報酬に含めるという考え方があります。企業が従業員のために提供する交通、住宅、通信への恩典で、貨幣化改革を実践し、月ごとに標準に従って住宅手当や交通費手当、車手当、通信手当を支払う場合、従業員給与報酬総額に含め、福利費管理を行わないことが規定されています(「財政部 企業の従業員福利費の強化に関する財務管理の通知(財企[2009]242号)」第二条)。

貨幣化改革とは翻訳に難しい言葉ですが、実費に関わらず規定に従った固定の手当を支給するというような意味合いです。

給与報酬として支給するので、実際の住宅費用がいくらか、また企業に対して家賃発票が発行されているかどうかという点が、税務上は論点にならないということになります。

住宅費を個人負担として給与報酬に含めるということはつまり手取りの増加を意味することになります。駐在員の方の多くがグロスアップで個人所得税及び税前給与を計算しているため、この処理の場合には個人所得税増額という結果を招くことになります(外国人の手当免税優遇政策、所得控除の論点を含めず考える場合)。

一方で、駐在員の家賃が福利費の枠を使わなくなりさらに給与総額に組み入れられるため、その他の福利費支出が損金に算入できる部分が大分拡大することになります。

 

最初にも書きましたが、駐在員の個人所得税の分野は個別性が強くリスクが高く、各種の状況に応じた細かい規定が相当に整備されています。税務上のご判断は本稿等の断片的な情報に依拠せず、個人所得税関係のご相談に流れるように対応できる、経験豊富な専門家にご相談いただいたうえで行われますようお願いします。