増値税:納税義務の発生時点

注:本稿は2019年8月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

2019年春、2018年に続き増値税法の改正があり、物品売買取引に関する主な税率が16%から13%に変更となりました。2019年の変更は2018年の経験(17%から16%に変更)があるため、税率が思ったより大きく変動したという以外にお客様のオペレーション上は余り混乱が生じなかったように思います。

 

このような増値税率の変動は今後も急に発生する可能性があります。

今号では、今後のため増値税率の変動のたびに論点となる「いつの時点の増値税率を使うべきか」について整理してみたいと思いますのでご参考ください。

 

 

 

 

【いつの時点の増値税率を使うべきか】

 

この論点は税法上それなりに整備された話である一方、極めて実務的な問題にもなりやすい分野となります。実務上起こりうる話として、たとえば

・3月中に税率16%で見積もりを出して合意したのに商品の引渡は4月を越えた。その場合に税率13%が適用されるのか?

・契約書に税率変更の場合の記載がないがどうすべきか。

といったことがあり得ると思います。こういった問題にすべて結論を示しているわけではありませんが、税法上は以下のように「増値税納税義務の発生時点」の問題として規定されています。つまり、上に例示したような各種の問題については、納税義務の発生時点をまず確定し、その時点における増値税率を使用すべきということになります。

 

1)物品の販売、加工修理修繕役務、有形動産リースサービス、物品の輸入

増値税暫定施行条例

第19条 増値税納税義務の発生時点:

(一)物品の販売または加工修理修繕役務の発生のときは、売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日とする。先に発票を発行した場合には、発票を発行した当日とする。

(二)物品を輸入したときは、輸入通関をした当日とする。

増値税の源泉徴収義務の発生する時間は、納税者に増値税の納税義務が発生した当日とする。

 

増値税暫定施行条例実施細則

第38条 条例第19条の第一款第(一)項に規定する売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日は、販売の決済方法により同一ではなく、具体的には以下の通り:

(一)直接売上代金を受領する方式の物品販売については、物品の搬送の有無にかかわらず、売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日とする。

(二)代金回収又は銀行に委託して代金回収する方式の物品販売については、物品を搬出し代金回収手続を委託した当日とする。

(三)割賦販売または延払方式の物品販売については、契約書に規定した売上代金受領の当日とし、契約書のない場合または契約書上売上代金受領の期日の規定がない場合には物品を搬出した当日とする。

(四)代金の前受を行う方式の物品販売については、物品を搬出した当日とする。但し製造販売の製造期間が12か月を越える大型機械設備、船舶、飛行機等の物品販売については、前受金を受領した日または契約書上の代金受領期日の当日とする。

(五)他の納税者に委託して物品を販売する場合、代理販売業者から代理販売明細を取得したまたは全部または一部分の物品売上代金を受領した当日とする。まだ代理販売明細を取得しておらず物品売上代金も受領していない場合、代理販売業者に物品を搬出してから180日を経過する当日とする。

(六)加工修理修繕役務の発生の場合、役務を提供し同時に売上代金を受領したまたは売上代金請求に関する根拠を取得した当日とする。

(七)納税者が本実施細則第四条第(三)項から第(八)項に規定する物品のみなし販売が発生した場合、物品を移送した当日とする。

 

2)課税サービス、無形資産の譲渡または不動産の販売

営改増試点実施弁法(財税201636号)

第四十五条 増値税の納税義務、源泉徴収義務の発生時点は次の通り。

(一)課税行為が発生し売上代金を受領したまたは売上代金請求書を取得した当日とする。先に発票を発行した場合には、発票を発行した当日とする。売上代金の受領とは、納税者が課税サービス、無形資産の譲渡または不動産の販売の過程で又は完了後に受け取った代金を言う。

売上代金請求書を取得した当日とは、契約書で確定した支払日を指す。

契約書を未締結または契約書上支払日が未確定の場合、課税サービスまたは無形資産の譲渡が完成した当日または不動産の権利帰属の変更が行われた当日とする。

(二)建築サービスにおいて前受金を受領する方式の場合、前受金を受領した当日とする。

(三)金融資産の譲渡に従事する場合、金融資産の所有権の移転が行われた当日とする。

(四)本弁法第十四条に規定する状況の場合、課税サービスまたは無形資産の譲渡が完成した当日または不動産の権利帰属の変更が行われた当日とする。

(五)増値税の納税義務が発生した当日を増値税源泉徴収義務の発生する時点とする。

 

これらの規定中には、税務実務上重要となる前受金が長期放置されることの問題点についてもふれられています。

 

今後も増値税率の変更はあり得ると思われるため、上記規定を参考に

・契約書を締結する

・そもそも税込で契約しているのか税抜きで契約しているのかを明確にする。

・特に税込・税抜両方の金額を明記して合意する場合に、契約書中に税率変更に関する条項を追加する

・売上にかかる請求書と発票の送付・発行時点を明確にする

といった対応が考えられます。このような書面上の対応は無用な取引先との摩擦を避けるために有効であると思われます。

 

次号では、値引きや返品のあった場合の増値税法上の取り扱いについて整理してまいります。

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019810

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特段制限なし

 

《増値税発票の管理等に関する公告》

文 件 名:《关于增值税发票管理等有关事项的公告

   国家税务总局公告2019年第33

链    http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810755/c5138164/content.html

主要内容

  • 增值税一般纳税人取得海关进口增值税专用缴款书(以下简称“海关缴款书”)后如需申报抵扣或出口退税,通过登陆本省(区、市)增值税发票选择确认平台(以下简称“选择确认平台”)查询、选择用于申报抵扣或出口退税的海关缴款书信息。(自202021起施行)
  • 增值税一般纳税人取得的2017年7月1日及以后开具的海关缴款书,应当自开具之日起360日内通过选择确认平台进行选择确认或申请稽核比对。(自202021起施行)
  • 增值税小规模纳税人(其他个人除外)发生增值税应税行为,需要开具增值税专用发票的,可以自愿使用增值税发票管理系统自行开具。选择自行开具增值税专用发票的小规模纳税人,税务机关不再为其代开增值税专用发票。(自202021起施行)

 

  • 翻译日文如下:

 

文書名:《増値税発票の管理等に関する公告》

文書番号:国家税務総局広告2019年第33

リンクhttp://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n810341/n810755/c5138164/content.html

内容

  • 増値税の一般納税人が税関の輸入増値税専用の納付書(以下「税関納付書」とする)を取得した後、控除または還付を申請する必要がある場合、該当する省(区、市)の増値税発票選択確認システム(以下「選択確認システム」とする)にログインして検索する。控除または輸出還付の税関納付書の申請に用いるデータを選択する。(2020年2月1日施行開始)
  • 増値税一般納税人が取得した2017年7月1日及びそれ以降に発行された関税納付書は、発行日から360日以内選択確認システムを通して確認または税関認証申請を選択実行しなければならない。(2020年2月1日施行開始)
  • 増値税小規模納税人(その他個人は除く)に増値税課税行為が生じ、増値税専用の発票の発行が必要な場合、増値税発票管理システムを使って自分で発票を発行することができる。小規模納税人が自分で増値税専用の発票を発行することを選んだ場合、税務機関が代わりにその発票を発行することはない。(2020年2月1日施行開始)

 

駐在員の帰任に関する税務処理の明確化

注:本稿は2019年7月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で一部の図表が壊れておりますのでご了承ください。

【はじめに】

前号に続き、駐在員の個人所得税税務実務を全般的に明確化する財政部・税務総局「非居住者個人及び住所を有しない居住者個人に関する個人所得税政策関連公告」(財政部税務総局公告2019年第35号、以下35号公告といいます)に基づく、駐在中の駐在員の個人所得税申告の論点について整理をします。

【本文】

今号では、期の途中で帰任する駐在員の税務処理について簡単にまとめます。

一般に駐在員は3年程度以上の任期を終え、本国に帰任するもしくは別の拠点への駐在に異動するのが一般的かと思います。着任の年に帰任するのは稀であるため、2018年以前の個人所得税実務上は「満1年以上5年未満」のカテゴリーに基づき、当該駐在員の方は帰任時まで申告を行っていました。

 

ところが、2019年からの改正所得税法においては年単位で居住者判定を行うことが明確化されたため、帰任する年において183日に満たずに帰任する場合には、その年は非居住者として申告を行うこととなりました。これは前年以前の処理と実務上大きく異なる点です。

 

 

個人所得税法 第一条

中国に住所を有する者、または住所がないが一納税年度内で中国国内に累計183日以上居住する個人は、居住者個人とする。

中国に住所がなく居住していない者、または住所がなく一納税年度内で中国国内に累計183日に満たない期間居住する個人は、非居住者個人とする。

 

 

これに伴い派生する論点として、「満1年以上6年に満たない居住者」として年の途中まで申告をしていた駐在員が急に帰任するようなケースがあげられます。

 

 

35号公告 五、(一)2

住所の無い個人が先に居住者個人として判定され、居住日数が短くなったことで居住者個人の要件を充たさない時は、居住者個人の要件に達しなくなった日から年度終了の15日以内までに、主管税務機関に対して報告をしなければならず、非居住者個人として課税所得を計算し直し、税金を追納しなければならず延滞金は徴収しない。還付の発生する場合、規定に基づいて処理をする。

 

 

なお35号公告においては、帰任後に取得したボーナスで、中国滞在期間中に属するものは中国の国内源泉所得とすることが明記されています。

 

 

35号公告 一、(二)

住所の無い個人が国内での契約履行又は職務の執行を停止し出国した後取得したボーナス又はストックオプション取得について、国内就業期間に属する分は国内源泉所得とする。

 

よって、帰任の翌月等に直ちに帰任時の確定申告として追納・還付申請をするよりは、帰任後最初のボーナス支給以降に確定申告を行う方が一般的には便宜があるでしょう。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019527

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

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本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特に期限なし

苦境企業への社会保険料部分還付

注:本稿は2019年7月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

社会保険料率の引き下げは今年も行われていますが、いくつかの地域の企業に対しては納付済の社会保険料の一部を補助金として返還するという実務があります。

内容について、簡単にご紹介します。

 

 

 

 

【納付した社会保険料の還付】

 

「苦境企業」を対象とした社会保険料還付の実務は地域に跨ってあるものの内容は地域によっても異なるため、以下では一般的な概念を記載します。

 

(1)人員削減を行わず、将来も行わない企業を対象とする

通常、還付の対象となる企業は一定期間内に「人員削減を行っていない」または「人員削減が僅少である」(人員の5%以下等)企業で、かつ社会保険の納付義務を果たしている企業であるようです。そういった企業のうち、一時的に生産経営が苦境に陥っているが、将来の回復については十分に有望であり、今後一年間現場工員に対する人員削減を行わないまたはあっても僅かであることを表明している企業を対象に、前年一定期間の納付済社会保険料の一定割合を企業に還付する決定がなされることが多いようです。

また、他の税目の減免が対象となることもあります。

 

(2)定量的な利益悪化指標の条件を充たす企業を対象とする

連続半年以上赤字となっている、前期比で3割以上利益が減少し続けている、等苦境企業の認定に際する定量指標は地域によってバラバラなようで、裁量もあると思われます。

 

(3)最低基数等を下回る工員がいる企業を対象とする

一部の工員の給与報酬が実際に地域の最低基数や平均給与の60%といった指標を下回っているような企業を対象とするようです。

 

(4)人力社会保障部門が主導で還付を決定する

税部門、商務部門、経信部門、財政部門と協働しながら、社会保険局が主導となるケースが多いようです。

 

(5)製造業等を対象とする

対象となる業種は製造業、建築業などの関係部門が定める「苦境業種」が基本ですが、飲食業や不動産業が含まれることもあるようです。一方で製造業のうち石油化学業や紙パルプ業等が認められないこともあります。

 

(6)年ごとに認定される可能性がある

本件実務は数年以上前からありますが、毎年地域によって認定検討が行われているようであり、今年(2019年)も中国とアメリカの貿易摩擦等の影響によって実施されている地域があります。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019623

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特段制限なし

 

《生活サービス業の仕入増値税追加控除政策に関する公告》

文 件 名:《关于明确生活性服务业增值税加计抵减政策的公告

   财政部 税务总局公告2019年第87

链    http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n359/c5137752/content.html

主要内容

一、“2019年10月1日至2021年12月31日,允许生活性服务业纳税人按照当期可抵扣进项税额加计15%,抵减应纳税额(以下称加计抵减15%政策)。”原先生活服务可以加计抵减10%,现在加大了政策优惠力度加计调整为15%

二、“本公告所称生活性服务业纳税人,是指提供生活服务取得的销售额占全部销售额的比重超过50%的纳税人。生活服务的具体范围按照《销售服务、无形资产、不动产注释》(财税〔2016〕36号印发)执行。” 文件链接

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c2043931/content.html

 

 

文 書 名:《生活サービス業の仕入増値税追加控除政策に関する広告》

文書番号:財政部 税務総局広告2019年第87号

リンク http://www.chinatax.gov.cn/chinatax/n359/c5137752/content.html

内 容 

一、“2019年10月1日から2021年12月31日まで、生活サービス業に従事する納税人は、当期の控除可能な仕入増値税に15%加算し、その上で課税額から控除することができる。(以下15%加速控除政策とする)。”以前の生活サービス仕入増値税追加控除10であったが、現在15調整され、大幅優遇政策となった

二、“本広告でいう生活サービス業に従事する納税人とは、生活サービスの販売額の比重が全体の50%を超える納税人を指す。生活サービスの具体的な範囲は《販売サービス、無形資産、不動産注釈》(財税〔2016〕36号)に基づいて執行する。” 文献リンク

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c2043931/content.html

 

「労務報酬の個人所得税申告2019」

注:本稿は2019年6月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

労働契約を締結した従業員に支払う給与は、給与報酬所得として個人所得税を申告します。

 

一方で、社外のアルバイト的な関与をされる方に対する報酬もよく発生します。これを労務報酬所得と言いますが、実務上イレギュラーな形で発生することが多いので意外にご質問を頂くことが多い内容です。

 

本号では、このようなケースにおける個人所得税の基本的考え方を解説します。

本号は20182月のMizuho China Weekly Newsに掲載した記事を、2019年個人所得税改正を反映して修正したものです。

【労務報酬所得:日本語】

 

(1)一般的な労務報酬の納税義務、税額計算方法

  1. 労務報酬所得の定義

労務報酬所得を得る場合には個人所得税を納税しなければなりません(個人所得税法第2条)。労務報酬所得とは、個人が設計、内装、据付、製図、化学験査、測定、医療、法律、会計、コンサルティング、講義、翻訳、原稿査閲、書画、彫刻、映画、録音、録画、演出、講演、広告、展覧、技術サービス、紹介サービス、ブローカーサービス、代行サービス及びその他の役務に従事して取得する所得を指します(個人所得税法実施条例第6条)。

 

  1. 月次源泉徴収税額の計算

労務報酬所得を支払う個人または会社は源泉徴収義務者となります。

源泉徴収義務者が居住者個人に労務報酬所得を支払う時、支払の都度または月ごとに源泉徴収納付をしなければなりません。

毎回の収入が4,000元を超えない場合には800元を差し引き、その残額を課税所得額とします。4,000元を越える場合には20%を差し引き、その残額を課税所得額とします(個人所得税源泉徴収納付申告管理弁法(試行)の発布に関する公告(国家税務総局公告2018年第61号、以下61号公告といいます)第八条)。

 

  1. 一般的な税率

労務報酬課税所得に対して比例税率を適用し、一般的な税率は20%とします(61号公告第八条)。

 

以上より、労務報酬の多くのケースについてはこれで計算が出来ます。

例えば雇用関係になくオフィスの掃除だけを手伝ってもらうような臨時工員に対し、税前で月1,000元の報酬を払うとする場合、

税額: (1,000 – 800 ) ×20%=40

手取り:1,000-40=960元

となります。

 

(2)良くある問題-グロスアップ

手取りで月1,000元の報酬を払うとする場合、

税額:(x – 800)×20%

手取り: x – {(x – 800)×20%} = 1,000

よって額面は1,050元となります。

 

(3)高額労務報酬

給与所得等との税率のアービトラージを避けるためと思いますが、労務報酬でも高額な場合には税率が20%ではなく、異なってきます。

具体的には、課税所得が20,000元を超える場合には超える部分につき30%が、50,000元を超える場合には超える部分につき40%が税率として課されます。

 

4)年度確定申告―19年からの論点

新個人所得税法の施行により、労務報酬所得は「総合所得」の一つの項目となり、年度ごとに給与報酬所得と合算の上、年間で納付すべき個人所得税を再計算することになります。よって労務報酬所得と給与報酬所得を共に得ている個人の場合には、通常納付すべき税額が予納税額と一致しないと想定されることから確定申告が必要となります。

 

例えば、上の例で月1,050元の労務報酬所得のみを得ている臨時工員の場合

 年間の課税所得は1,050×0.8×1260,0000 よって年間納付税額は0

 累計予納金額は(1,050 – 800)×20%×12600

よって600元が確定申告後個人に還付されると考えられ、会社としては手取りが月1,000元になるように設定したはずが、最終的に個人の手元に届く金額は月1,050元となることになります。

 

余談となりますが、この総合所得の概念の導入及び所得控除(专项附加扣除の概念の導入を主因として、「手取り」での契約が実務上問題となる部分が多いことから、「手取り」で契約を行っているお客様によっては税前への切替を進められております。しかし、「手取り」での契約がダメになったという意味ではない点も重要であって、誤解のないようにお願いいたします。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201958

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特段制限なし

 

 

「駐在員の駐在中に関する税務処理の明確化」①

注:本稿は2019年5月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で一部の図表が壊れておりますのでご了承ください。

【はじめに】

前号に続き、駐在員の個人所得税税務実務を全般的に明確化する財政部・税務総局「非居住者個人及び住所を有しない居住者個人に関する個人所得税政策関連公告」(財政部税務総局公告2019年第35号、以下35号公告といいます)に基づく、駐在中の駐在員の個人所得税申告の論点について整理をします。

 

前号でも示した通り、2019年改正個人所得税法以前の駐在員税務実務において具体的な状況に応じ計算方法を定めていた「国家税務総局国内に住所の無い個人が取得する給与報酬所得の納税義務問題に関する通知」(国税発[1994]148号、以下94年通知といいます)や「国家税務総局中国国内に住所の無い個人の税収協定の執行及び個人所得税法の若干問題に関する通知(国税発[2004]97号、以下04年通知といいます)等に替わり、35号公告が公布され2019年1月1日に遡って施行されました(同時に94年通知や04年通知は廃止されました)。

【本文】

2019年5月の申告時より、個人所得税申告システム(※)のユーザーインターフェースが35号公告を反映した内容となり、外国人(※※)についてシステム中の各「公式」に基づいて申告を行う形となりました。

※:上海市、広東省、江蘇省のシステムは確認済

※※:正確には「総合所得申告」の「正常給与報酬所得」、「非居住者所得申告」の「外籍人員正常給与報酬」等

 

「公式」に基づいて申告を行うのは2018年以前の実務にもあったものですが、2019年年初の個人所得税申告システムからは一度削除されており、今回35号公告公布後再登場する形となりました。外国人が在籍する経営者の皆様におかれましては、今回財務担当者から

・外国人の申告実務が「公式」を選択する形で申告を行うよう変化しました

・当社の在籍する外国人についてはXXの形で申告を行います

・4月までの計算方法とXXのような変更があり、XX元程度の税額の影響があります、もしくは特段計算方法や税額に影響はありません

というような報告は受けられましたでしょうか?

もちろん、申告システムに変更があったから即ち申告内容に変更が出るということではありませんし、税法の改正や新法規の公布に合わせて必要な場合変更となるべきですが、いずれにしてもリスクの高い駐在員の個人所得税税務実務に一定の影響を与える事項ですので、社内で報告・連絡・相談が出来ているかというテストケースのひとつになるかもしれません。(この手のテストケースは実務上頻繁に発生します)

 

 

 

閑話休題。2018年以前の実務では、94年通知や04年通知等に基づき「中国に満1年以上5年を超えず居住している駐在員」について以下に基づき申告計算を行っていました。

 

 

 

国税发[1994]148号

四、关于在中国境内无住所但在境内居住满1年的个人纳税义务的确定根据税法第一条第一款、实施条例第六条的法规,在中国境内无住所但在境内居住满1年而不超过5年的个人,其在中国境内工作期间取得的由中国境内企业或个人雇主支付和由中国境外企业或个人雇主支付的工资薪金,均应申报缴纳个人所得税;

 

 

国税发[2004]97号

(三)按国税发〔1994〕148号第四条或第五条规定负有纳税义务的个人应适用国税函发〔1995〕125号第四条规定的下述公式:

应纳税额=[当月境内外工资薪金应纳税所得额×适用税率-速算扣除数]×[1-当月境外支付工资/当月境内外支付工资总额×当月境外工作天数/当月天数]

 

 

今回35号公告により、類似した公式が定められました。

 

 

二、住所の無い居住者個人に関する給与報酬所得収入額計算

(二)住所の無い個人が居住者の場合

一納税年度内で、国内に累計して満183日居住する住所の無い個人が取得する給与報酬所得について、当月の給与報酬収入額は以下の規定に基づき計算する;

1.住所の無い個人が国内に累計して満183日居住する年度が連続して6年に満たない場合

国内に累計して満183日居住する年度が6年に満たない住所の無い居住者個人は、実施条例第四条の優遇条件に符合する場合、国外で就業する期間に帰属しかつ国外の会社又は個人が支払う給与報酬所得部分を除き、その取得する全部の給与報酬所得について、個人所得税を計算納付しなければならない。給与報酬収入額の計算公式は次の通り(公式三);

当月の給与報酬収入額=当月国内外給与報酬総額×

      当月国外支払給与報酬額  当月給与報酬所属就業期間国外就業日数

  1- ―――――――――――――× ―――――――――――――――――

    当月国内外支払給与報酬総額 当月給与報酬所属就業期間カレンダー日数

 

 

「住所の無い」という用語は過去の本レポートでも解説していますが、駐在終了後中国国外へ帰任する個人は「住所の無い」個人であるという定義が一番基本的なものです。また、今号では解説を省略しますが、財政部・税務総局「中国国内で住所の無い個人の居住時間の判定標準に関する公告」(財政部税務総局公告2019年第34号)により、全ての外国人の「満183日居住する年度」は2019年を1年目として起算することになります。

 

ここで、35号公告の上位の規定となり、上の規定でも参照されている個人所得税法実施条例第四条の箇所を記載します。

 

 

 

第四条 中国にいる住所の無い個人で、中国国内の居住日数が累計で満183日となる年度が連続して6年に満たない場合、主管税務機関に届け出の上、中国国外源泉所得且つ中国国外の企業または個人が支払う所得については、個人所得税の納税を免除する。

 

この「主管税務機関に届け出の上」の表現は2018年以前の個人所得税法実施条例の表現を踏襲していますが今一つ明確でない部分であり、お客様側でもご確認ください。

 

(1)実施条例第四条の「個人所得税の納税を免除する」をどう考えるか

実施条例第四条の「個人所得税の納税を免除する。」は財務以外の方にもクローズアップされやすく、且つ誤解を生みやすい点ですが思考回路は以下のように考えられます。

 

 

「中国国外源泉所得且つ中国国外の企業または個人が支払う所得については、個人所得税の納税を免除する。」(実施条例第四条)

 

 

「国外で就業する期間に帰属しかつ国外の会社又は個人が支払う給与報酬所得部分を除き、その取得する全部の給与報酬所得について、個人所得税を計算納付しなければならない。」(35号公告二(二)1.)

 

 

給与報酬収入額の計算公式は次の通り(公式三);

 

つまり、非常に基本的な点ですが会社が各自勝手に「中国国外源泉所得且つ中国国外の企業または個人が支払う所得については、個人所得税の納税を免除する。」を解釈するのではなく、実務上は公式三に基づいて計算申告を行うべきことになります。

 

(2)一般的な駐在員は日本で受け取る給与を申告すべきなのか

上に関係する論点ですが、そもそも一般的な中国現地法人の駐在員は日本等で受け取る給与についても中国で申告すべきなのでしょうか。これについては、駐在員の方を三パターンに分けて考えると良いと思います。

 

① 中国大陸の現地法人に出向し(雇用契約等の関係にあり)、出向元等他の会社の職務を持たない方

駐在員の方で多いのはこのパターンです。下の規定により、日本等で受け取る給与も中国国内で役務提供する対価と解されるため、すべてが中国国内源泉所得の給与として申告が必要です。

 

個人所得税法実施条例第三条(一)「任職、雇用、契約等中国国内で役務を提供することで取得する所得は支払地点が中国であるか否かに関わらず、中国国内源泉所得である

 

かつ、この方の場合は下の規定により、国外に出張や休暇に出たとしてもすべて国内で就業していると計算されるため、前頁(35号公告二(二)①)の公式の分子後半「当月給与報酬所属就業期間国外就業日数」が0になります。公式の後半の分数計算は不要となり、単純に「当月の給与報酬所得=当月国内外給与報酬総額」となります。

 

 

35号規定一(一)「国内の就業期間には国内での実際就業日、国内外での公休暇、個人の休暇、研修を受けた日数を含む。」

 

 

上の2点によりこの方は、日本等で受け取る給与を含めたすべての給与所得を申告しなければなりません。(次号に続く)

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201954

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特に期限なし

「社会保険徴収に関する動向」

注:本稿は2019年5月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

 

今号では多くの皆様のご関心のある社会保険徴収に関する各種決定を整理して報告します。直近メディア等既に目を通されたお客様にとっては、さほど目新しいことの記載はないかもしれません、その際はご了承ください。

 

 

 

 

【概説:日本語】

 

  1. 税務・社会保険徴収の一体化猶予など

 

国務院は2019年4月1日付で「社会保険納付比率の引き下げ総合法案の通知」(国弁発[2019]13号、 http://www.gov.cn/zhengce/

content/2019-04/04/content_5379629.htm )を発布し、以下の内容を明確にしました。

 

①過去の徴収漏れについて

過去の企業の社会保険料納付漏れの問題に対し、徴収体制改革過程中企業の過去の納付漏れに対する徴収を集中的に行ったり、小規模企業の実際納付負担の増加につながる一切の方法を採用したりして、企業の生産経営が困難となることを避けなければならない。

 

②平均給与の算定方法改訂について

社会保険基数の範囲を決定する基礎となる平均給与の算定方法について改訂を行う。各省は各地非私営企業の就業人員平均給与と、各地私営企業の就業人員平均給与を加重平均して各地の就業人員平均給与を求め、社会保険の基数の上下限を決めなければならない。

2019年4月9日の人力資源社会保障部、財政部、税務総局、国家医保局の責任者インタビューによると、平均給与はこの改訂により下がることが示唆されており、連動して基数の最低金額及び最高金額が下がることが想定されます。

 

③社会保険の徴収移管猶予について

企業の従業員の各種社会保険の納付について、原則として現行の徴収体制を継続する。つまり、社会保険部門が徴収していたものは社会保険部門が徴収し、税務部門が徴収していたものは税務部門が徴収し、納付方法の安定化に努める。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019423

 

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本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:20191231

 

 

中文

 

国务院办公厅关于印发降低社会保险费率综合方案的通知(国办发〔2019〕13号)

 

三、调整社保缴费基数政策

调整就业人员平均工资计算口径。各省应以本省城镇非私营单位就业人员平均工资和城镇私营单位就业人员平均工资加权计算的全口径城镇单位就业人员平均工资,核定社保个人缴费基数上下限,合理降低部分参保人员和企业的社保缴费基数。

 

六、稳步推进社保费征收体制改革

妥善处理好企业历史欠费问题,在征收体制改革过程中不得自行对企业历史欠费进行集中清缴,不得采取任何增加小微企业实际缴费负担的做法,避免造成企业生产经营困难。

 

企业职工基本养老保险和企业职工其他险种缴费,原则上暂按现行征收体制继续征收,即,原由社保征收的继续由社保征收,原由税务征收的继续由税务征收,稳定缴费方式

「駐在員の着任に関する税務処理の明確化」

注:本稿は2019年4月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で一部の図表が壊れておりますのでご了承ください。

【はじめに】

2月号のレターでも記した通り、改正個人所得税法、個人所得税法実施条例及び源泉徴収に関する各法規だけでは、駐在員の個人所得税計算が従前のように十分に出来ない、もしくは担当者によって解釈が割れる可能性が十分にあり、「国家税務総局国内に住所の無い個人が取得する給与報酬所得の納税義務問題に関する通知」(国税発[1994]148号、以下94年通知と言います)のような規定に替わる新たな規定の整備が求められていました。

 

今回2019年3月14日付けで財政部税務総局は「非居住者個人及び住所を有しない個人に関する個人所得税政策関連公告」(財政部税務総局公告2019年35号、以下35号公告といいます)を公布し、2019年1月1日に遡って施行されました(同時に94年通知は廃止が明確化されました)。この35号公告は駐在員の税務実務を全般的に明確化することに寄与した公告になり、今号では着任時の論点について整理をします。

【はじめに】

まず、2月号のレターの内容を一部再掲しますと、国外の親会社から駐在員の形で中国の子会社に就業する外国人は、以前94年通知三の以下部分に基づき個人所得税計算・申告を行っていました。つまり例えば2019年3月に初めて来中する外国人駐在員で、駐在期間が1年以上予定されている外国人の場合には、来中した3月当初から満183日以上の外国人と「みなして」計算・申告納税を行っていました。

 

 

国税发[1994]148号

取得的工资薪金所得是由境外雇主支付并且不是由中国境内机构负担的个人,事先可预定在一个纳税年度中连续或累计居住超过90日或在税收协定法规的期间中连续或累计居住超过183日的,其每月应纳的税款应按税法法规期限申报纳税。

 

今回19年年初までの改正により、「一年間に183日以上いる外国人は居住者、それ以下は非居住者である」とシンプルに定義・整理されたため、税務局窓口や局内でも当初それ以外の指導が行われず、2019年3月に初めて来中する外国人駐在員で、駐在期間が1年以上予定されている外国人の場合にも、最初は非居住者として申告をし、その後居住者に変更しなければならないのか?混乱が見られることになりました。

 

今回35号公告により、以下の点が明確となりました。

 

 

五、住所の無い個人に関する関連徴税管理規定

(一)住所の無い個人の予定国内居住時間に関する規定

住所の無い個人が一納税年度に初めて申告をするとき、契約等の状況に基づき一納税年度内に国内に居住する日数並びに租税協定に規定する期間内の国内滞在日数を見積もり、その状況に応じて税金を納付しなければならない。実際の状況が見積もりの状況と異なることになった場合、以下の規定に基づいて処理を行う。

 

この規定により、今年の中途において初めて来中する駐在員が駐在開始時点より居住者として申告すればよいか、非居住者として申告すればよいかの指針が確定しました。一般に駐在員の場合には駐在初年度中に駐在任期が満了し、国外へ帰任することはないと思いますので、そのような契約等の状況に基づき年末まで居住を続けると仮定したうえで居住者または非居住者として申告をその年度において続けて行うことになります。

同時に、既に昨年以前より中国に派遣されている駐在員が(一般には)居住者として申告すればよいことも確定しました。理論的には比較的大きな内容と言えます。

 

なお、「住所を有する」とは戸籍、家庭、経済利益関係により中国国内に習慣的に居住することを指します(改正個人所得税法実施条例第2条)。なお、仕事等により居住し、その原因が消滅した後中国から帰国する個人は中国が習慣的居住地ではありません(国家税務総局「個人所得税の徴税に関する若干問題規定」の印刷発布に関する通知、国税発[1994]89号)ので、駐在員の任務を終えた後国外へ帰任する駐在員の方は通常住所を有しないものと考えます。また、居住地の判定については別途いくつかの規定があるため、軽率に判断することはお勧めいたしません。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201949

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特に期限なし

 

 

「一般製造・研究開発企業の研究開発促進税制」

注:本稿は2019年4月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

 

今号も、直近の規定ではないですがお客様のリクエストに基づき、一般製造・研究開発業の研究開発促進税制である「研究開発費の追加損金算入」の関連規定の概説を行います。

 

 

 

 

【概説:日本語】

 

  1. 大別

まず、研究開発費の追加損金算入に関する規定は大きく分けて2つがあります。

① 新技術、新製品、新工芸生産開発の研究開発費の追加損金算入

② 科学技術型中小企業の新技術、新製品、新工芸生産開発の研究開発費の追加損金算入

 

科学技術型中小企業かどうかは、以下の規定で判定します。

科技部財政部国家税務総局 「科学技術型中小企業評価弁法」の印刷発布に関する通知(国科発政[2017]115号、http://www.most.gov.cn/mostinfo/xinxifenlei/fgzc/

gfxwj/gfxwj2017/201705/t20170510_132709.htm 、以下115号規定といいます)

 

115号規定中、科学技術型中小企業に該当する企業は「高新技術企業資格証書」などを有するか、または「科学技術型中小企業評価指標」の「総合評価ポイント」が60より多いなどの条件を充たす必要があります。総合評価ポイントは、科学技術人員指標(最大20ポイント)、研究開発投入指標(最大50ポイント)、科学技術成果指標(最大30ポイント)の合計で計算をします。

 

以下では、科学技術型中小企業ではない【一般】企業を対象とした規定について説明をします。

 

  1. 新技術、新製品、新工芸生産開発の研究開発費の追加損金算入

企業が新技術、新製品、新工芸生産開発の研究開発を行う時、その費用の実質が存在し、無形資産計上せずに費用が発生した期に研究開発費として損金計上を行う場合、計上した研究開発費用の75%を追加損金算入することができます。無形資産に計上する場合には、計上した無形資産の償却費の75%を追加で特別償却することができます。

「追加損金算入」は確定申告上納税調整の一環として行うため、日本のように税額控除を行うわけではありません。

 

関連規定は色々ありますが、現在以下の2つの規定が主な内容を規定しており、他の規定はこれらを補足・調整したりする内容となっています。

 

財政部国家税務総局科技部「研究開発費用の追加損金算入政策の完全化に関する通知」(財税[2015]119号、http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c1878881/content.html )

国家税務総局「企業研究開発費用の追加損金算入政策関連問題の公告」(国家税務総局公告2015年97号、http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c1981362/content.html )

 

ここで、本来の追加損金算入割合は50%ですが、2018年1月1日から2020年12月31日までの期間は以下の追加優遇規定により75%と規定されています。

財政部国家税務総局科技部「研究開発費用追加損金算入割合の引き上げに関する通知」(財税[2018]99号、http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c3754895/content.html )

 

まず対象となる産業の対象は広く、ホテル業、飲食業、卸売業、小売業、不動産業、商務サービス業などを主要業務とする会社以外すべてとなっています。

研究開発費として計上を行うために、プロジェクトの計画書を作成する、専任の研究開発人員が誰かを明確にし研究開発を行う資産(機械等)が何かを明確化する、研究開発支出としての補助帳簿を作成する、企業所得税確定申告書上追加の書面を提出すると言った要求があります。

研究開発は外部委託の研究開発を妨げるものではありませんが、以下のような活動は研究開発とは呼ばないと言った制限があります。

・製品の通常の改良、アップグレード

・製品化後のアフターサービス

・既存製品のプロセス改善

 

対象となる研究開発費の範囲を費目別に定義すると、以下のようになります。

・研究開発人員の人件費・・・直接研究開発に従事する人員の給与報酬、社会保険、外部研究開発人員の労務費用

・直接投入費用・・・研究開発活動の直接消耗費用、中間試験試作品の開発製造費、サンプルやテスター等の購入費、試作品の検査費用、研究活動設備の修理調整費用、関連するオペレーティングリース費用

・固定資産の減価償却費・・・研究開発活動の器具備品の減価償却費

・無形資産償却費・・・研究開発活動に使うソフトウェアや特許権の償却費用、ライセンス等の償却費用

・新製品の設計費等・・・新製品の設計費用

・外部機構や個人に委託して進めた研究開発活動で発生した費用

 

なお、研究開発費の会計処理は企業会計準則6号―無形資産などに基づき行います。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201937

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:20201231

 

 

中文

 

关于开发新技术、新产品、新工艺发生的研究开发费用加计扣除:

企业为开发新技术、新产品、新工艺发生的研究开发费用,未形成无形资产计入当期损益的,在按照规定据实扣除的基础上,按照研究开发费用的75%加计扣除;形成无形资产的,按照无形资产成本175%摊销。对从事文化产业支撑技术等领域的文化企业,开发新技术、新产品、新工艺发生的研究开发费用,允许按照税收法律法规的规定,在计算应纳税所得额时加计扣除。

 

主要法规:

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c1878881/content.html

财政部 国家税务总局 科技部 关于完善研究开发费用税前加计扣除政策的通知

财税〔2015〕119号

 

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c1981362/content.html

国家税务总局 关于企业研究开发费用税前加计扣除政策有关问题的公告

国家税务总局公告2015年第97号

 

补充法规:

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c3754895/content.html

财政部 税务总局 科技部 关于提高研究开发费用税前加计扣除比例的通知

财税〔2018〕99号

 

研发费结构:

一、人员人工费用小计

直接从事研发活动人员     工资薪金

五险一金

外聘研发人员的劳务费用

二、直接投入费用小计

研发活动直接消耗             材料

燃料

动力费用

用于中间试验和产品试制的模具、工艺装备开发及制造费

用于不构成固定资产的样品、样机及一般测试手段购置费

用于试制产品的检验费

用于研发活动的仪器、设备的运行维护、调整、检验、维修等费用

通过经营租赁方式租入的用于研发活动的仪器、设备租赁费

三、折旧费用小计

用于研发活动的仪器的折旧费

用于研发活动的设备的折旧费

四、无形资产摊销小计

用于研发活动的软件的摊销费用

用于研发活动的专利权的摊销费用

用于研发活动的非专利技术(包括许可证、专有技术、设计和计算方法等)的摊销费用

五、新产品设计费等小计

新产品设计费

新工艺规程制定费

新药研制的临床试验费

勘探开发技术的现场试验费

六、其他相关费用小计

七、委托外部机构或个人进行研发活动所发生的费用