増値税:値引きと赤字発票の発行

注:本稿は2019年9月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

前号は増値税実務の基本論点として、増値税率の変動のたびに実務上の焦点となりやすい「いつの時点の増値税率を使うべきか」について整理しました。

 

関連論点として、今号では値引き、販売の中止や返品があった場合についての取り扱いを以下の順番でご説明します。

① 値引き、販売の中止や返品があった場合についての増値税法上一般的取扱い

② 値引き、販売の中止や返品があった場合で税率変更があるときの取り扱い

③ 赤字発票を発行する場合の具体的操作

 

 

 

 

 

【値引きや返品があった場合の一般的取扱い】

 

増値税暫定施行条例実施細則

第11条 一般納税人が販売物品の返品又は値引により買い手に返金する増値税額については、販売物品の返品又は値引が発生した当期の売上増値税額から控除しなければならない。購買物品の返品又は値引により受領した増値税額については、購買物品の返品又は値引が発生した当期の仕入税額から控除しなければならない。

一般納税人の物品販売または加工修理修繕役務を提供し、増値税専用発票を発行した後、販売物品の返品又は値引、発行間違い等の状況が発生したとき、国家税務総局の規定により赤字増値税専用発票を発行しなければならない。規定により赤字増値税専用発票をまだ発行していない時は、増値税額を売上増値税額中から控除してはならない。

 

 

増値税若干具体問題の規定 

国税発[1993]154

二、(二)納税者が物品販売で値引きをするとき、売上額と値引き額が同じ発票上に区分して明示されているとき、値引き後の売上額を以て売上増値税の課税対象としてよい。もし値引き額が別の発票で発行されているとき、会社の財務上の処理の如何に関わらず、売上額から値引額を控除することは出来ない。

 

 

値引きにより増値税課税売上を減額する問題に関する通知

国税函[2010]56

「納税者が物品販売で値引きをするとき、売上額と値引き額が同じ発票上に区分して明示されているとき、値引き後の売上額を以て売上増値税の課税対象としてよい。」について。納税者が物品販売で値引きをするとき、売上額と値引き額が同一の発票上に区分して明記するとは、売上額と値引き額が同一発票上の「金額」欄に区分して明示されていることを指し、値引き後の売上額を以て売上増値税の課税対象として良い。同一発票上の「金額」欄に値引き額が明示されず、発票の「備考」欄に値引き額が明示されているだけのときは、売上額から値引額を控除できない。

 

 

 

営業税改正増値税試点実施弁法

第四十二条

納税者が課税行為を発生し、増値税専用発票を発行した後、発行間違えや販売の値引き、中止、返品等の状況が生じたとき、国家税務総局の規定に基づき赤字増値税専用発票を発行しなければならない。規定に基づき赤字増値税専用発票を発行していない時、本弁法三十二条と三十六条の規定に基づき売上増値税または売上額から控除することは出来ない。

第四十三条

納税人が課税行為を発生し、代金と値引き額を同一の発票上に区分して明記するとき、値引き後の金額を以て売上額とする。同一の発票上に区分して明記していない時、代金を以て売上額とし、値引きすることは認められない。

 

 

【値引きや返品があった場合で増値税率が変更となる場合の取扱い】

 

2019年春の増値税改革の際に、税率の変更を跨いで値引き、販売の中止や返品があった場合についての取り扱いが明示されました。その公告の関連個所を抜粋します。

前号の納税義務発生時点の論点を踏まえれば難解ではないかと思いますし、第三項の「手修正により元の税率を適用し増値税発票を発行してよい。」と言う部分は実務上ポイントとなります。

 

増値税改革深化に関する関連事項の公告

国家税務総局公告2019年第14

一、増値税一般納税人が増値税率の調整前既に元の税率を適用し増値税発票を発行していて、値引きや販売の中止、返品等の状況が発生し赤字発票の発行が必要となる場合、元の税率を適用して赤字発票を発行する。発票の発行に誤りがあり新たに発行し直す場合、元の税率を適用して赤字発票を発行した後、新たに正確な黒字発票を元の税率に基づき発行する。

 

二、納税者が増値税税率の調整前に行った増値税発票を発行していない増値税課税行為で、増値税発票を発行する必要のある場合、元の税率に基づき発行しなければならない。

 

三、増値税発票の税控開票ソフトウェアの税率欄に表示されている調整後税率は、納税者が本公告第一条、第二条に基づき発行し直すまたは追加発行をする場合、手修正により元の税率を適用し増値税発票を発行してよい。

 

四、税務総局は増値税発票税控開票ソフトウェア中の「商品とサービス税収分類番号表」を更新したので、納税者は更新後の「商品とサービス税収分類番号表」に基づき増値税発票を発行しなければならない。

 

 

【赤字発票の発行】

 

上では赤字発票の発行プロセスについて触れられていますが、具体的には状況により以下の2つの発行の流れが考えられます。

 

1)売り手が増値税専用発票を買い手にまだ交付していない場合や、買い手がまだ仕入税額控除を申告しておらず且つ発票聯と控除聯を返還する場合、売り手が増値税発票管理システム中「赤字増値税専用発票発行情報表」を記載アップロードし、元の税率に基づき赤字発票を発行します。

 

2)買い手が増値税専用発票を取得し既に仕入税額控除を申告している場合、または買い手が専用発票を取得して仕入税額をまだ控除していないが発票聯と控除聯を返還できない場合、買い手が増値税発票管理システム中「赤字増値税専用発票発行情報表」を記載アップロードし、売り手が買い手の「赤字増値税専用発票発行情報表」に基づき元の税率で赤字発票を発行します。

 

 

「赤字増値税専用発票発行情報表」はアップロードされると税務局システムにおいて自動認証が行われ、通過後赤字発票情報表番号が明示されます。赤字発票の内容と認証通過した「赤字増値税専用発票発行情報表」の内容は一致すべきであり、電子情報又は紙資料を税務調査に備え証憑として保存するのが適切となります。

 

次号も増値税の論点の続きとしまして、仕入増値税の認証に関する実務的論点を整理します。

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019810

 

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