駐在員の帰任に関する税務処理の明確化

注:本稿は2019年7月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で一部の図表が壊れておりますのでご了承ください。

【はじめに】

前号に続き、駐在員の個人所得税税務実務を全般的に明確化する財政部・税務総局「非居住者個人及び住所を有しない居住者個人に関する個人所得税政策関連公告」(財政部税務総局公告2019年第35号、以下35号公告といいます)に基づく、駐在中の駐在員の個人所得税申告の論点について整理をします。

【本文】

今号では、期の途中で帰任する駐在員の税務処理について簡単にまとめます。

一般に駐在員は3年程度以上の任期を終え、本国に帰任するもしくは別の拠点への駐在に異動するのが一般的かと思います。着任の年に帰任するのは稀であるため、2018年以前の個人所得税実務上は「満1年以上5年未満」のカテゴリーに基づき、当該駐在員の方は帰任時まで申告を行っていました。

 

ところが、2019年からの改正所得税法においては年単位で居住者判定を行うことが明確化されたため、帰任する年において183日に満たずに帰任する場合には、その年は非居住者として申告を行うこととなりました。これは前年以前の処理と実務上大きく異なる点です。

 

 

個人所得税法 第一条

中国に住所を有する者、または住所がないが一納税年度内で中国国内に累計183日以上居住する個人は、居住者個人とする。

中国に住所がなく居住していない者、または住所がなく一納税年度内で中国国内に累計183日に満たない期間居住する個人は、非居住者個人とする。

 

 

これに伴い派生する論点として、「満1年以上6年に満たない居住者」として年の途中まで申告をしていた駐在員が急に帰任するようなケースがあげられます。

 

 

35号公告 五、(一)2

住所の無い個人が先に居住者個人として判定され、居住日数が短くなったことで居住者個人の要件を充たさない時は、居住者個人の要件に達しなくなった日から年度終了の15日以内までに、主管税務機関に対して報告をしなければならず、非居住者個人として課税所得を計算し直し、税金を追納しなければならず延滞金は徴収しない。還付の発生する場合、規定に基づいて処理をする。

 

 

なお35号公告においては、帰任後に取得したボーナスで、中国滞在期間中に属するものは中国の国内源泉所得とすることが明記されています。

 

 

35号公告 一、(二)

住所の無い個人が国内での契約履行又は職務の執行を停止し出国した後取得したボーナス又はストックオプション取得について、国内就業期間に属する分は国内源泉所得とする。

 

よって、帰任の翌月等に直ちに帰任時の確定申告として追納・還付申請をするよりは、帰任後最初のボーナス支給以降に確定申告を行う方が一般的には便宜があるでしょう。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:2019527

 

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