注:本稿は2019年6月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。
【はじめに】
労働契約を締結した従業員に支払う給与は、給与報酬所得として個人所得税を申告します。
一方で、社外のアルバイト的な関与をされる方に対する報酬もよく発生します。これを労務報酬所得と言いますが、実務上イレギュラーな形で発生することが多いので意外にご質問を頂くことが多い内容です。
本号では、このようなケースにおける個人所得税の基本的考え方を解説します。
本号は2018年2月のMizuho China Weekly Newsに掲載した記事を、2019年個人所得税改正を反映して修正したものです。
【労務報酬所得:日本語】
(1)一般的な労務報酬の納税義務、税額計算方法
- 労務報酬所得の定義
労務報酬所得を得る場合には個人所得税を納税しなければなりません(個人所得税法第2条)。労務報酬所得とは、個人が設計、内装、据付、製図、化学験査、測定、医療、法律、会計、コンサルティング、講義、翻訳、原稿査閲、書画、彫刻、映画、録音、録画、演出、講演、広告、展覧、技術サービス、紹介サービス、ブローカーサービス、代行サービス及びその他の役務に従事して取得する所得を指します(個人所得税法実施条例第6条)。
- 月次源泉徴収税額の計算
労務報酬所得を支払う個人または会社は源泉徴収義務者となります。
源泉徴収義務者が居住者個人に労務報酬所得を支払う時、支払の都度または月ごとに源泉徴収納付をしなければなりません。
毎回の収入が4,000元を超えない場合には800元を差し引き、その残額を課税所得額とします。4,000元を越える場合には20%を差し引き、その残額を課税所得額とします(個人所得税源泉徴収納付申告管理弁法(試行)の発布に関する公告(国家税務総局公告2018年第61号、以下61号公告といいます)第八条)。
- 一般的な税率
労務報酬課税所得に対して比例税率を適用し、一般的な税率は20%とします(61号公告第八条)。
以上より、労務報酬の多くのケースについてはこれで計算が出来ます。
例えば雇用関係になくオフィスの掃除だけを手伝ってもらうような臨時工員に対し、税前で月1,000元の報酬を払うとする場合、
税額: (1,000 – 800 ) ×20%=40
手取り:1,000-40=960元
となります。
(2)良くある問題-グロスアップ
手取りで月1,000元の報酬を払うとする場合、
税額:(x – 800)×20%
手取り: x – {(x – 800)×20%} = 1,000
よって額面は1,050元となります。
(3)高額労務報酬
給与所得等との税率のアービトラージを避けるためと思いますが、労務報酬でも高額な場合には税率が20%ではなく、異なってきます。
具体的には、課税所得が20,000元を超える場合には超える部分につき30%が、50,000元を超える場合には超える部分につき40%が税率として課されます。
(4)年度確定申告―19年からの論点
新個人所得税法の施行により、労務報酬所得は「総合所得」の一つの項目となり、年度ごとに給与報酬所得と合算の上、年間で納付すべき個人所得税を再計算することになります。よって労務報酬所得と給与報酬所得を共に得ている個人の場合には、通常納付すべき税額が予納税額と一致しないと想定されることから確定申告が必要となります。
例えば、上の例で月1,050元の労務報酬所得のみを得ている臨時工員の場合
年間の課税所得は1,050×0.8×12-60,000<0 よって年間納付税額は0
累計予納金額は(1,050 – 800)×20%×12=600
よって600元が確定申告後個人に還付されると考えられ、会社としては手取りが月1,000元になるように設定したはずが、最終的に個人の手元に届く金額は月1,050元となることになります。
余談となりますが、この総合所得の概念の導入及び所得控除(专项附加扣除)の概念の導入を主因として、「手取り」での契約が実務上問題となる部分が多いことから、「手取り」で契約を行っているお客様によっては税前への切替を進められております。しかし、「手取り」での契約がダメになったという意味ではない点も重要であって、誤解のないようにお願いいたします。
本稿の執筆時点は次の通りです:2019年5月8日
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