「駐在員の着任に関する税務処理の明確化」

注:本稿は2019年4月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で一部の図表が壊れておりますのでご了承ください。

【はじめに】

2月号のレターでも記した通り、改正個人所得税法、個人所得税法実施条例及び源泉徴収に関する各法規だけでは、駐在員の個人所得税計算が従前のように十分に出来ない、もしくは担当者によって解釈が割れる可能性が十分にあり、「国家税務総局国内に住所の無い個人が取得する給与報酬所得の納税義務問題に関する通知」(国税発[1994]148号、以下94年通知と言います)のような規定に替わる新たな規定の整備が求められていました。

 

今回2019年3月14日付けで財政部税務総局は「非居住者個人及び住所を有しない個人に関する個人所得税政策関連公告」(財政部税務総局公告2019年35号、以下35号公告といいます)を公布し、2019年1月1日に遡って施行されました(同時に94年通知は廃止が明確化されました)。この35号公告は駐在員の税務実務を全般的に明確化することに寄与した公告になり、今号では着任時の論点について整理をします。

【はじめに】

まず、2月号のレターの内容を一部再掲しますと、国外の親会社から駐在員の形で中国の子会社に就業する外国人は、以前94年通知三の以下部分に基づき個人所得税計算・申告を行っていました。つまり例えば2019年3月に初めて来中する外国人駐在員で、駐在期間が1年以上予定されている外国人の場合には、来中した3月当初から満183日以上の外国人と「みなして」計算・申告納税を行っていました。

 

 

国税发[1994]148号

取得的工资薪金所得是由境外雇主支付并且不是由中国境内机构负担的个人,事先可预定在一个纳税年度中连续或累计居住超过90日或在税收协定法规的期间中连续或累计居住超过183日的,其每月应纳的税款应按税法法规期限申报纳税。

 

今回19年年初までの改正により、「一年間に183日以上いる外国人は居住者、それ以下は非居住者である」とシンプルに定義・整理されたため、税務局窓口や局内でも当初それ以外の指導が行われず、2019年3月に初めて来中する外国人駐在員で、駐在期間が1年以上予定されている外国人の場合にも、最初は非居住者として申告をし、その後居住者に変更しなければならないのか?混乱が見られることになりました。

 

今回35号公告により、以下の点が明確となりました。

 

 

五、住所の無い個人に関する関連徴税管理規定

(一)住所の無い個人の予定国内居住時間に関する規定

住所の無い個人が一納税年度に初めて申告をするとき、契約等の状況に基づき一納税年度内に国内に居住する日数並びに租税協定に規定する期間内の国内滞在日数を見積もり、その状況に応じて税金を納付しなければならない。実際の状況が見積もりの状況と異なることになった場合、以下の規定に基づいて処理を行う。

 

この規定により、今年の中途において初めて来中する駐在員が駐在開始時点より居住者として申告すればよいか、非居住者として申告すればよいかの指針が確定しました。一般に駐在員の場合には駐在初年度中に駐在任期が満了し、国外へ帰任することはないと思いますので、そのような契約等の状況に基づき年末まで居住を続けると仮定したうえで居住者または非居住者として申告をその年度において続けて行うことになります。

同時に、既に昨年以前より中国に派遣されている駐在員が(一般には)居住者として申告すればよいことも確定しました。理論的には比較的大きな内容と言えます。

 

なお、「住所を有する」とは戸籍、家庭、経済利益関係により中国国内に習慣的に居住することを指します(改正個人所得税法実施条例第2条)。なお、仕事等により居住し、その原因が消滅した後中国から帰国する個人は中国が習慣的居住地ではありません(国家税務総局「個人所得税の徴税に関する若干問題規定」の印刷発布に関する通知、国税発[1994]89号)ので、駐在員の任務を終えた後国外へ帰任する駐在員の方は通常住所を有しないものと考えます。また、居住地の判定については別途いくつかの規定があるため、軽率に判断することはお勧めいたしません。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201949

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

また、本ページは概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。法令法規の説明を除き、解説は執筆者個人の判断や解釈を反映するものであり、所属団体としての意見を表明するものではありません。企業の所在地域、種類や規模によっても解釈が異なる可能性があります。個別の実務上の問題については貴社と直接契約するプロフェッショナルにご相談ください。貴社と契約するプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本ページの情報を基に判断し行動されないよう、お願いいたします。

 

本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:特に期限なし

 

 

「一般製造・研究開発企業の研究開発促進税制」

注:本稿は2019年4月のみずほフィナンシャルグループの Mizuho Global InfoStation- 中国会計・税務の現場から に掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。

 

【はじめに】

 

今号も、直近の規定ではないですがお客様のリクエストに基づき、一般製造・研究開発業の研究開発促進税制である「研究開発費の追加損金算入」の関連規定の概説を行います。

 

 

 

 

【概説:日本語】

 

  1. 大別

まず、研究開発費の追加損金算入に関する規定は大きく分けて2つがあります。

① 新技術、新製品、新工芸生産開発の研究開発費の追加損金算入

② 科学技術型中小企業の新技術、新製品、新工芸生産開発の研究開発費の追加損金算入

 

科学技術型中小企業かどうかは、以下の規定で判定します。

科技部財政部国家税務総局 「科学技術型中小企業評価弁法」の印刷発布に関する通知(国科発政[2017]115号、http://www.most.gov.cn/mostinfo/xinxifenlei/fgzc/

gfxwj/gfxwj2017/201705/t20170510_132709.htm 、以下115号規定といいます)

 

115号規定中、科学技術型中小企業に該当する企業は「高新技術企業資格証書」などを有するか、または「科学技術型中小企業評価指標」の「総合評価ポイント」が60より多いなどの条件を充たす必要があります。総合評価ポイントは、科学技術人員指標(最大20ポイント)、研究開発投入指標(最大50ポイント)、科学技術成果指標(最大30ポイント)の合計で計算をします。

 

以下では、科学技術型中小企業ではない【一般】企業を対象とした規定について説明をします。

 

  1. 新技術、新製品、新工芸生産開発の研究開発費の追加損金算入

企業が新技術、新製品、新工芸生産開発の研究開発を行う時、その費用の実質が存在し、無形資産計上せずに費用が発生した期に研究開発費として損金計上を行う場合、計上した研究開発費用の75%を追加損金算入することができます。無形資産に計上する場合には、計上した無形資産の償却費の75%を追加で特別償却することができます。

「追加損金算入」は確定申告上納税調整の一環として行うため、日本のように税額控除を行うわけではありません。

 

関連規定は色々ありますが、現在以下の2つの規定が主な内容を規定しており、他の規定はこれらを補足・調整したりする内容となっています。

 

財政部国家税務総局科技部「研究開発費用の追加損金算入政策の完全化に関する通知」(財税[2015]119号、http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c1878881/content.html )

国家税務総局「企業研究開発費用の追加損金算入政策関連問題の公告」(国家税務総局公告2015年97号、http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c1981362/content.html )

 

ここで、本来の追加損金算入割合は50%ですが、2018年1月1日から2020年12月31日までの期間は以下の追加優遇規定により75%と規定されています。

財政部国家税務総局科技部「研究開発費用追加損金算入割合の引き上げに関する通知」(財税[2018]99号、http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c3754895/content.html )

 

まず対象となる産業の対象は広く、ホテル業、飲食業、卸売業、小売業、不動産業、商務サービス業などを主要業務とする会社以外すべてとなっています。

研究開発費として計上を行うために、プロジェクトの計画書を作成する、専任の研究開発人員が誰かを明確にし研究開発を行う資産(機械等)が何かを明確化する、研究開発支出としての補助帳簿を作成する、企業所得税確定申告書上追加の書面を提出すると言った要求があります。

研究開発は外部委託の研究開発を妨げるものではありませんが、以下のような活動は研究開発とは呼ばないと言った制限があります。

・製品の通常の改良、アップグレード

・製品化後のアフターサービス

・既存製品のプロセス改善

 

対象となる研究開発費の範囲を費目別に定義すると、以下のようになります。

・研究開発人員の人件費・・・直接研究開発に従事する人員の給与報酬、社会保険、外部研究開発人員の労務費用

・直接投入費用・・・研究開発活動の直接消耗費用、中間試験試作品の開発製造費、サンプルやテスター等の購入費、試作品の検査費用、研究活動設備の修理調整費用、関連するオペレーティングリース費用

・固定資産の減価償却費・・・研究開発活動の器具備品の減価償却費

・無形資産償却費・・・研究開発活動に使うソフトウェアや特許権の償却費用、ライセンス等の償却費用

・新製品の設計費等・・・新製品の設計費用

・外部機構や個人に委託して進めた研究開発活動で発生した費用

 

なお、研究開発費の会計処理は企業会計準則6号―無形資産などに基づき行います。

 

 

本稿の執筆時点は次の通りです:201937

 

本ページは執筆日より前の法令等に基づいて作成されており、直近及びこれ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。国家税務総局等のURLは執筆日現在で有効なものを記載しています。

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本稿の内容は最長で次の時点まで有効である可能性があります:20201231

 

 

中文

 

关于开发新技术、新产品、新工艺发生的研究开发费用加计扣除:

企业为开发新技术、新产品、新工艺发生的研究开发费用,未形成无形资产计入当期损益的,在按照规定据实扣除的基础上,按照研究开发费用的75%加计扣除;形成无形资产的,按照无形资产成本175%摊销。对从事文化产业支撑技术等领域的文化企业,开发新技术、新产品、新工艺发生的研究开发费用,允许按照税收法律法规的规定,在计算应纳税所得额时加计扣除。

 

主要法规:

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c1878881/content.html

财政部 国家税务总局 科技部 关于完善研究开发费用税前加计扣除政策的通知

财税〔2015〕119号

 

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c1981362/content.html

国家税务总局 关于企业研究开发费用税前加计扣除政策有关问题的公告

国家税务总局公告2015年第97号

 

补充法规:

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/

c3754895/content.html

财政部 税务总局 科技部 关于提高研究开发费用税前加计扣除比例的通知

财税〔2018〕99号

 

研发费结构:

一、人员人工费用小计

直接从事研发活动人员     工资薪金

五险一金

外聘研发人员的劳务费用

二、直接投入费用小计

研发活动直接消耗             材料

燃料

动力费用

用于中间试验和产品试制的模具、工艺装备开发及制造费

用于不构成固定资产的样品、样机及一般测试手段购置费

用于试制产品的检验费

用于研发活动的仪器、设备的运行维护、调整、检验、维修等费用

通过经营租赁方式租入的用于研发活动的仪器、设备租赁费

三、折旧费用小计

用于研发活动的仪器的折旧费

用于研发活动的设备的折旧费

四、无形资产摊销小计

用于研发活动的软件的摊销费用

用于研发活动的专利权的摊销费用

用于研发活动的非专利技术(包括许可证、专有技术、设计和计算方法等)的摊销费用

五、新产品设计费等小计

新产品设计费

新工艺规程制定费

新药研制的临床试验费

勘探开发技术的现场试验费

六、其他相关费用小计

七、委托外部机构或个人进行研发活动所发生的费用