2019年07月20日
注:本稿は2019年3月の樱智而望企业管理咨询(上海)有限公司顧客向けレポートに掲載されました弊社提供記事です。貼付の過程で図表の一部が壊れておりますことをご了承ください。
【はじめに】
改正個人所得税法に基づく申告・納税が2019年2月より行われ、また累計計算による給与計算も早ければ2019年2月月初払いより適用され、改正に関する実務は一巡をしてまいりました。
今回は、本社採用で中国に派遣された中国人駐在員の方の申告の論点について触れ、改正個人所得税法に合わせて導入されたため余り脚光を浴びていない納税者識別ルールの整理について解説を行います。
【本文】
現在日本本社で採用され、駐在員として中国に派遣される中国人の方は少なくありません。それぞれ個人の事情は異なりますが、総合すると以下のような特徴を持つ方が多いといえます。
①中国の身分証またはパスポートを保有しており、かつ日本で永住権等を取得している。
②日本本社で採用され、駐在後は家族の本来居住地である日本に戻る予定である。
③中国の身分証等を保有しているため、就業ビザを取る必要がない。
④他の駐在員同様日本で社会保険に加入し続けているため、中国で社会保険に加入すると二重加入になる。
上のような方を仮に本稿では「中国人駐在員」の方と呼ぶことにします。
こういった中国人駐在員の方は、今回の改正以前では個人所得税法上「華僑」というカテゴリーがありまして一般の中国人の方より優遇を受けた形(月3500元ではなく4800元の税額控除)で申告を行うことが多くみられました。今回の改正で「華僑」の概念は消滅したわけではないようですが、少なくとも18年10月の改正により税額控除は中国人外国人に関わらず月5000元(年6万元)に統一されたため、華僑と主張する税法上のメリットはなくなりました。
ところで、今回の個人所得税の改正に伴い、以前も類似規定はありましたが「自然人納税人識別番号関連事項に関する公告」(国家税務総局公告2018年第59号、http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/
c3960494/content.html 、以下59号規定と言います)が2018年12月17日付で公布されています。
59号規定により以下のように規定されています。
・自然人納税人識別番号は、自然人の納税人が税務実務を行う際の唯一の番号となります。税務実務には、申告、納税、還付申請、納税証明の発行、納税状況確認等が含まれますので、この番号が一度付与されれば中国の税務実務で使い続けることになります。
・中国の身分証を持つ者は、中国の身分証が自然人納税人識別番号となります。
・中国の身分証を持たないものは、「有効な身分証」を税務局に提出したうえで税務局により納税人識別番号を付与されます。
・「有効な身分証」は、以下により定義されます。
- 中国の身分証を有する中国公民の場合、中国の身分証。
- 【中国のパスポートを有する】(意訳)華僑で中国の身分証がない場合、中国のパスポートと華僑の身分証明。
- 香港・マカオ住民の場合、《港澳居民来往内地通行证》または《中华人民共和国港澳居民居住证》。
- 台湾住民の場合、《台湾居民来往大陆通行证》または《中华人民共和国台湾居民居住证》。
- 《中华人民共和国外国人永久居留身份证》を持つ外国人の場合、《中华人民共和国外国人永久居留身份证》と外国パスポート。
- 《中华人民共和国外国人永久居留身份证》はないが、《中华人民共和国外国人工作许可证》を有する外国人の場合、《中华人民共和国外国人工作许可证》と外国パスポート。
- その他の外国人の場合、外国パスポート。
この規定及び弊社の顧客実務の必要によりヒアリングしたいくつかの税務局によれば、以下のことが説明できます。
①59号規定の通り、中国の身分証を持つ中国人駐在員は中国の身分証により個人所得税の申告をしなければなりません。
②外国パスポートを除き、他の外国の身分証は一切中国税務申告上有効なものではありません。よって、例えば「日本の永住許可証」は中国の申告上使用してはいけません。
③中国で社会保険に加入していない駐在員中国人の方の場合。税務申告情報と社会保険の情報一元化により一定のリスクはありますので、個別ケースごとに加入の要否を再検討されるべきでしょう。
④駐在員の場合どのような法的形態により中国に派遣されているかが立替給与の国外送金の論点はもちろん、社会保険上でも判断根拠となるようです。合法的な範囲で個々及び会社のニーズに応じた契約・給与支払形態が採られるべきでしょう。
本稿の執筆時点は次の通りです:2019年3月9日
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