2019年05月01日
注:本稿は2018年4月のみずほフィナンシャルグループ MIZUHO CHINA WEEKLY NEWSに掲載されました記事を2019年5月に内容確認したものです。
香港では会社法が改正され、2018年3月1日より「実質的支配者登録(Significant Controllers Register, SCR)制度」が導入されました。これにより、上場企業を除くすべての香港で設立登記されている企業は「実質的支配者」に関する情報を所定の場所に備え置き、また随時実質的支配者の情報の更新を行うべきコンプライアンス担当者を設置しなければなりません。実質的支配者の情報は以下の情報が含まれます。
(1)自然人の場合
名称、住所、香港身分証番号またはパスポートの発行国と番号、実質支配者になった日付(2018年3月1日以降)、支配権の性質(例:25%以上の株式を有する)
(2)会社の場合
名称、登記番号、住所、会社形式、管轄法、実質支配者になった日付、支配権の性質
全ての香港企業で登録備置が必要ということですので、大陸の親会社として雇用人員がおらずオフィスがないようないわゆるペーパーカンパニーであっても、この実質的支配者登録制度への対応を速やかに行う必要があります。
本号では、本改正会社法に定める実質的支配者概念について解説します。
【実質的支配者の概念】
実質的支配者は当該会社に実質的な支配権を有する自然人または複数の自然人または会社を指します。
実質的支配者の判定にあたり、会社は実質的支配者を識別するための合理的な手続を踏まなければなりません。たとえば、登記されている董事や株主の成員、定款、株主間契約やその他の契約または実質的支配者を識別する何らかの通知等が考えられます。
実質的支配者は以下の5条件のうち一つ以上を充たす者とされています。
・直接または間接的にその会社の株式の25%以上を保有する者。
・直接または間接的にその会社の議決権の25%以上を有する者。
・直接または間接的にその会社の取締役会の多数を任命又は解任する権利を有する者。
・その会社に実質的な影響力又は支配権を行使する権利を有するまたは実際に行使する者。
・信託や事務所等を通じて上記の条件を有する者。
例①
自然人1、非香港企業Aは共に香港企業Bの実質的支配者(候補)です。
例②
自然人2は香港企業Cの実質的支配者(候補)です。
なお、実質的支配者が不明な場合でも、SCR備置制度を逃れることは出来ません。たとえば、実質的支配権を識別するための手続きを踏んだが自然人または会社を識別できなかったとして登記を行う事例が、会社登記局により想定されています。この場合、
「当社は当社の実質的支配者が存在しないことを知っています、または当社の実質的支配者が存在しないことを信じるに足る合理的な理由を有しています。」
とSCR上記載する必要があります。
複雑なケースや具体的な実質的支配者の判断については、貴社の会社秘書役又は各専門家に確認いただくのがよいでしょう。